たとえば、俳優が上半身の露出には同意していたが、お尻を出すことは聞いていない場合、現場で急に監督が「お尻も出したい」と演出を変更して撮影したとしても、事前に同意書に書かれていないものは表に出せないのです。日本はアメリカほどの契約社会ではありませんが、監督がそういう約束違反のアドリブを要求したときは同様の判断をすべきでしょう。
同じように、俳優自身が事前に話し合っていた以上のアドリブをしようとすることに対しても、気をつけなければいけません。なぜなら、インティマシー・シーンにはその俳優だけではなく、相手がいるからです。役に没入して熱演したといえば聞こえがよくても、相手は聞いていたのと違うことをされて驚くでしょうし、場合によっては恐怖すら感じると思います。そもそも、そのシーンは結局カットとなれば、どんなに「いい」演技をしても意味はないと言えるでしょう。
◆このお話のつづき、【インティマシー・コーディネーターってどんな仕事?(後編)~誰もが「イエス」「ノー」を言える環境をつくるには】では、インティマシー・コーディネーターの仕事から見えてくる「同意」の大切さや、ハラスメントを防ぐための知識を、西山さんにうかがいます!