2008年6月に成立した国家公務員制度改革基本法のなかで、「議院内閣制の下、政治主導を強化」するために、「内閣官房に、内閣総理大臣の命を受け、内閣の重要政策のうち特定のものに係る企画立案に関し、内閣総理大臣を補佐する職(国家戦略スタッフ)」を置き、スタッフは「公募を活用するなど、国の行政機関の内外から人材を機動的に登用できるものとする」と書かれている。麻生内閣では、この基本法を受けてその具体化のための検討を続けてきたが、10年に「首相の命を受け、戦略的に推進すべき重要政策について、首相を補佐する」国家戦略スタッフを設け、その数は30人以内とするが、その数は政令で定めるとした内容を含む国家公務員制度改革関連法案を、09年3月末に閣議決定をして、国会に提出していた。「新時代の国家ビジョンをつくる」国家戦略室に関する鳩山由紀夫構想は、こうした政府の動きを受けたものであることは疑いない。09年8月の総選挙向けの民主党のマニフェストにおいても、「官邸機能を強化し、総理直属の『国家戦略局』を設置し、官民の優秀な人材を結集して、新時代の国家ビジョンを創り、政治主導で予算の骨格を策定する」とされた。
09年9月16日に成立した鳩山内閣は、同月18日に「国家戦略室の設置に関する規則」を総理大臣決定により、「内閣官房に、税財政の骨格、経済運営の基本方針その他内閣の重要政策に関する基本的な方針等のうち内閣総理大臣から特に命ぜられたものに関する企画及び立案並びに総合調整を行うため、当分の間、国家戦略室を置く」とされた。戦略室には室長と室員が置かれるほか、非常勤の政策参与を置くことが定められた。そして、国家戦略室担当大臣に菅直人副総理、室長に古川元久衆院議員が就任した。部屋は首相官邸の向かいの内閣府本府の2階に置かれた。そして11月2日、国家戦略室の陣容がようやく整い、菅戦略相、古川内閣府副大臣、津村啓介内閣府政務官、荒井聡首相補佐官の国会議員4人のほか、民間スタッフ5人と官僚5人の合計14人で構成されることになった。民間スタッフは、民主党の政策研究機関や商社などから採用された。官僚は財務省出身が2人、国土交通省、文部科学省、内閣府から各1人という構成である。なお、12月に民主党所属議員12人が国家戦略室と行政刷新会議の業務を応援するスタッフとなった。その後、国家戦略室のスタッフは増員され、菅内閣(10年発足)には官僚と民間と合わせて約50人となった。