「『クラン・コソバ』という民放局があるのですが、この局はクルティ批判をたびたび行うので、圧力がかけられました。コソボの場合は電波停止ではなくて、営業免許停止です。2023年8月1日付のロイターがこの措置を伝えましたが、クラン・コソバ側は放送を続けています」
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日本でも、放送局に対して電波停止を命じる可能性に言及した高市早苗総務相(当時)の発言が物議をかもしたが、クルティ首相はさらに踏み込んだと言える。
それでもクラン・コソバは2024年現在も怯むことなく放送を続けている。
コソボの公共放送に対する支援活動を追うことで、その国内情勢が見えてきた。ナショナリズムを超える公正な報道の礎になろうとした異なる民族のジャーナリストたちと、政権に就くや否や、真っ先にメディアに圧力をかけて牛耳ろうとする権力者。その報道弾圧の構図は、フィリピン、ロシア、中国、ミャンマー、EU加盟国のハンガリー等々、幾多の国で垣間見られるが、ことコソボに関しては、隣国アルバニアを巻き込んだ紛争の火種が再燃しないかが憂慮される。
イビツァ・オシム
旧ユーゴスラビア最後のサッカー代表チーム監督。1941~2022年。
「大アルバニア主義」
アルバニア民族主義者による主張の一つで、本来のアルバニアは、現在の領土にとどまらず、コソボ、ギリシャやマケドニアの一部も含むものであるとする考え。
アルバニア「本国」
コソボのアルバニア系住民によるアルバニアの呼称。