AKB48が直面しているのが「コモディティー化」だ。コモディティーとは「普及品」という意味。商品やビジネスモデルにおいて新規参入が相次ぎ、機能や品質などによる差別化が困難となって値下げ競争が加速、誰でも買える「日用品」になることだ。
コモディティー化の典型が薄型テレビだ。薄型テレビが登場した当時、生産できるのは数社だけ、価格は1インチ1万円を超える高額商品だった。性能にも大きな格差が存在していたことから、高い技術を持っていた日本のメーカーは大きな利益を上げていた。
しかし、薄型テレビの生産技術は急速に広まり、韓国をはじめとした「新興勢力」が相次いで参入、日本のメーカーの優位性は失われ、どのメーカーの製品も同じとなる。激しい値下げ合戦へ突入した薄型テレビは、庶民でも手が届く日用品、つまりコモディティーになり、日本のメーカーの収益も激減してしまった。
コモディティー化は、パソコンや携帯電話、半導体メモリーをはじめとした電子部品など、規格や仕様が標準化されて世界共通となっている分野で起こりやすい。規格や仕様が標準化されていることで、後発組でも新規参入がしやすく、努力次第ですぐに追いつくことが可能となるからだ。チェックのミニスカートを着せた女の子たちを、集団で踊らせるという「規格」を守れば、同じようなグループを作ることができるというAKB48だからこそ、コモディティー化の恐れが高まってしまう。
コモディティー化は消費者にとってはありがたいことだが、企業にとっては経営を圧迫する大問題であり、これを避けるための様々な対策が打ち出される。コモディティー化を避けるためには、価格以外の方法で差別化を実現することが必要だ。その手段の一つが「ブランド化」、ネーミングやパッケージングなどのマーケティング活動によって差別化を図るのだ。他社にはないアフターサービスを加えるといった「付加価値」を高めることも、コモディティー化を避ける手段となる。
しかし、最も有力なのは、他社がまねできない独創的な商品や機能を開発すること。これに成功すれば、価格競争に巻き込まれず、コモディティー化も避けられる。AKB48を「卒業」、誰もまねできない自らの個性だけで勝負しようとしている前田敦子のような行動を起こすことが、コモディティー化を回避する最善の策なのである。
「総選挙」に「じゃんけん大会」と、様々な戦略を打ち出していることから、今のところAKB48にコモディティー化の兆しは見られない。しかし、日本は多くの分野でコモディティー化に直面、苦しい経営を強いられている企業は多い。他社の追随を許さない、独創性を生み出すことができるのか? 世界市場で大きな人気を誇ってきた日本企業は正念場を迎えている。