このように複数の商品を束(バンドル)にして一括販売するのが「バンドリング」だ。いわゆる「抱き合わせ商法」で、広範囲に使われている。
バンドリングのメリットの一つが、コスト削減効果。複数の商品をまとめて売ったほうが、包装や販売のコストを削減できるため、価格を抑えることができる。また、複数の商品を一緒に提供することによる相乗効果もある。購入した電子機器の接続サービス、家具や大型家電の買い替えに伴う設置や引き取りサービスなどがその一例だろう。また、消耗品の定期的な送付や、自動車の定期的な点検なども、バンドリングと考えることができる。購入した商品に合わせた関連商品やサービスを探す手間(サーチコスト)を減らすという点で、消費者にもメリットがあるのがバンドリングなのだ。
しかし、バンドリングの本質は、あくまで売り上げアップにある。パソコンのワープロと表計算のソフトで考えてみよう。価格はそれぞれ1万2000円で、機能は劣るが1万円の他社製品があるとする。ここでA、B二人の消費者を想定し、Aさんはワープロソフトが重要で1万2000円を払ってもよいが、表計算ソフトはあまり使わないので、他社製品の1万円でいいと考えているとしよう。一方、Bさんは表計算ソフトを重要視し、1万2000円支払ってもよいが、ワープロソフトは1万円の他社製品で十分だと考えている。
この二人にワープロと表計算のソフトの両方を買ってもらうには、競合他社と同じく価格を1万円にする必要がある。この場合、4本のソフトが売れて4万円の売り上げとなる。しかし、AさんもBさんも重要度こそ異なるものの、ソフトに総額2万2000円を支払う意思がある。そこで二つのソフトをバンドリングし、価格を2万2000円に設定する。これによって、AさんにもBさんにも「お得感」を与えて、4本のソフトを売ることが期待できる。
ここで注目されるのが売り上げで、バラで4本を売るために価格を1万円にした場合より4000円高い4万4000円となる。これがバンドリングのからくりだ。バンドリングには、価格競争を抑制する効果があり、どちらのソフトも1万円で購入できるかもしれないという、消費者の利益を奪っているのだ。
こうしたことから、バンドリングを排除した販売方法で、消費者に訴えることもある。「アンバンドリング」と呼ばれる方法で、ソフトを一切インストールしないパソコン、アルバムの中から好きな曲だけ「単品」でダウンロードできる音楽配信などはその一例だろう。この場合、消費者はより安く製品やサービスを得ることができるが、その一方で、適合性などの商品を選ぶ知識が必要となるため、なかなか広がらないのが実情。
莫大な開発費がかかっているヤフーやグーグルなどの検索サービスソフトが無料で提供されているのも、広告などの事業がバンドリングされているから。経済活動の至るところに仕込まれているのがバンドリングであり、その存在をしっかりと意識することが、賢い選択につながるのである。