毎年5月になると、ラッシュアワーの電車のように大混雑する、東京証券取引所(東証)の映像とともに流されるニュースだ。
決算報告書は、「企業の家計簿」に相当する。収入と支出をまとめた「損益計算書」と、資産や借金の状況をまとめた「貸借対照表」が中核をなしていて、企業の売り上げや利益、特別にかかった費用などが網羅されているのだ。
発表は原則年2回、会計年度が半年経過した時点での「中間決算」と、会計年度終了後に発表される「本決算」だ。これに加えて、簡略化された3カ月ごとの「四半期決算」も発表されるようになった。
大半の企業の会計年度が、4月に始まり3月に終わることから、本決算を「3月期決算」と呼ぶこともある。しかし、決算は3月と決められているわけではない。百貨店やスーパーなどの流通業は「2月期決算」、欧米企業の大半は1月に会計年度が始まることから、「12月期決算」となっている。このほか、数は少ないが5月や11月期決算の企業もある。
3月期決算の場合、3月末時点での数字を集計し、5月に決算発表、それをもとに株主総会が開かれるというスケジュールとなる。早いところでは、4月下旬に決算発表を行うところもあるが、物理的にかなりの時間を要することから、大半はゴールデンウイーク明けの5月中旬から下旬にかけて行われることになる。
決算発表は、企業の最も重要な情報開示であることから、十分な時間をかけて行われるべきだ。しかし、東証1部だけでも1600社以上の企業があることから、分散させても限界があり、100社以上が発表する日も出てくる。東証では、「兜倶楽部」と呼ばれる記者クラブで発表が行われるが、同時に十数社が決算発表することもあるため、場所も時間も制限される。その結果、東証1部上場の大企業であっても、2~3人の記者に対して、小さな応接テーブルを挟んで決算発表を行うという、奇妙な光景が展開されることになる。なんともお寒い決算発表だが、これが偽らざる現実なのだ。
定期的な決算発表のほかに、随時行われるのが「業績予想の修正」だ。決算報告書には、当該期間の実績のほかに、次の期の売り上げや利益などの業績予想が記されている。これが、株式を売買する上でも重要な材料となっているのだが、予想はあくまで予想、その後に大きな変化が生じる場合も少なくない。
そこで行われるのが、「業績予想の修正」だ。東証1部の場合、売上高が10%、経常利益や当期利益が30%以上予想から外れることが確実になった場合、「業績予想の修正」を発表し、投資家に周知することが求められている。
「企業の家計簿」である決算報告書は、株価も大きく左右する極めて重要な情報だ。数字の羅列に拒否反応を持つ人も多いが、コツを飲み込んでしまえば、解読は容易だ。また、決算の骨組みは世界共通。日本企業の決算報告書が理解できれば、アメリカの企業でもヨーロッパの企業でも、同じように経営状況を理解することができる。
「世界共通語」である決算書の読み方をマスターし、グローバルなビジネスにも生かしたい。