中学校関係者Gさん
〈教員たちは、時数として形だけこなしたとしても、子どもたちはあまりのスピードの速さに理解は深まっていないと口々に言っています〉
中学校関係者Hさん
〈授業の面ですが、中学3年生ということもあり「どうにかして終わらせるため」の授業が組まれています。定期テストが1学期間で1回しかなく、生徒もかなり疲弊しています。体調を崩しても無理する生徒も多くいます。社会は積み残しが多く、社会科の先生は「飛ばしているけど終わらないし、生徒は理解してないだろう」とおっしゃっていました〉
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3番目に気になったのが、学校現場の「3密」状態です。学校では「3密」に対してさまざまな工夫がなされていますが、生徒間の「密」を避けるために、教職員の負担が増加しているとの報告も複数ありました。
小学校関係者Iさん
〈授業に関しては、ペア・グループワークはできないので、自分一人の力で問題解決できない子にとっては、苦しい状態です。音楽の授業では、歌唱やリコーダーもできないことになっているので、どんな授業ができるか、いまだに模索中です。体育も、非接触の活動に限定されていて、ダンスや体幹トレーニング、縄跳びなどをやっていますが、そろそろ子どもたちも飽きてきたようで、この先何をしようか悩んでいます〉
小学校関係者Jさん
〈3密を避けるため、休み時間の教員巡回をしています。しかしあまり効果はなく、負担は大きいです。手洗い、換気、水分補給などの対策はしていますが、放課後になるとどうしても密になっています。抱きついたりしている子もいるほど。毎時間付き添えるわけでもないので、見ていないところで密になっていると考えられます〉
小学校関係者Kさん
〈学校現場はかなり密です。教室の机も出来る限り離していますが、50cm程度離すのが限界です。休み時間も出来る限り、集団遊びではなく一人遊び、また、校庭・体育館・教室の3カ所に分散するよう声を掛けておりますが、全てを教職員で見るのは不可能で、やはり少しでも目を離したところでは、密集して遊んでいる様子が見られます〉
高校関係者Lさん
〈生徒の教室はもちろん、教員室での密も避けるのが難しいです。当番制でランチの場所を変えるなどして対応していますが、生徒は教室でランチを食べるため、机を移動したり、友達の近くで喋りながらご飯を食べたりなど、完全に制御しきれない状態が続いております〉
こうした声から、生徒同士の「密」を避けるために授業時間だけでなく休み時間にも「巡回」することを強いられたり、昼食や放課後の時間も生徒たちの「密」状態を心配したりと、悩んでいる教職員の姿が見えてきます。
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新形コロナがもたらした混乱の中で、「消毒作業の負担」「授業時間の大幅な増加」「密状態」に苦しんでいる学校の実態が分かってきました。最後に私がとても気になった、ある中学校の校長先生からの声を紹介します。このメッセージは「教育現場からのSOS」を示していると言ってよいでしょう。それにどう応えるかが、私たちに問われています。
中学校校長Mさん
〈教職員・子どもたちともに疲弊がひどく、正直組織として9月まで持つだろうかというのが本音です〉
重労働化している「消毒作業」には、一刻も早く教職員以外の人員を充てるべきではないでしょうか。教育環境が正常に戻るまでは教職員の負担を少しでも減らし、授業や子どもたちの指導に取り組みやすくする態勢を整えることが大切だからです。
授業時間の大幅な増加によって、「進度の遅れ」を短期間で解消しようとすることも避けるべきでしょう。入学試験は出題範囲の制限や選択式の出題を行うなどの工夫で、受験する学年の学習量負担を軽減し、全学年が単年度で遅れを取り戻すのではなく、複数年を掛けて着実に遅れ分を埋めていく方法が学校教育として望ましいと私は考えます。
そして教育現場の「3密」状態を回避するには、教職員増員による「少人数クラス」の実現が必要不可欠です。現在の「40人」を基準とするクラスではなく、「20人」を基準とすることによって、教育現場の「3密」状態を可能な限り解消し、子どもたちの感染リスクを下げることが望まれます。
少人数クラスの利点は「3密」状態の回避だけではありません。生徒の人数が少なくなることによって、授業においても生徒指導においても、教職員が子どもたち一人ひとりに丁寧に向かい合うことが可能となります。授業時間増加によって形式的に「時数を消化」することに注力するのでなく、一人ひとりの子どもたちに、学習内容がしっかりと定着する方向へと転換することが求められます。
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再開された教育現場からのSOSは、「コロナ災害」以前から深刻だった「教員の過剰労働」「詰め込み教育」「多人数クラス」など、日本の学校教育の問題性をより一層あらわにしています。疲弊している教職員と子どもたちを助けるためには、「十分な予算と人員」を学校現場に一刻も早く投入する必要があります。
今こそ、教育現場からのSOSに耳を傾け、私たちが動き出すことが強く求められているのです。