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では、具体的には何が必要でしょうか? まず長時間労働の是正など、教員の労働条件の改善をただちに実行することです。一般社団法人日本若者協議会 が22年4月に発表した「教員志望者減少に関する教員志望の学生向けアンケート結果」によれば、教員志望の学生が減っている理由として「長時間労働など過酷な労働環境」との回答が94%にも達しています。21年11月、名古屋大学の内田良教授らが全国の学校と小・中学校教員を対象に実施した「学校の業務に関する調査」の調査報告(第1報)によれば、持ち帰り仕事を含めた平均残業時間は小学校で95時間超、中学校で121時間超に達しています。
このように、教員志望者減少の理由が長時間労働にあることは明らかなのですから、長時間労働の是正に向けての取り組みを進めていくことこそが、教員不足解決のカギとなります。部活動顧問のあり方を含めて教員の働き方を改善すること、特に長時間労働をもたらす要因となっている「給特法」(公立の義務教育諸学校等の教育職員の給与等に関する特別措置法)の廃止、または抜本見直しが必要不可欠であることは、本連載「学校の先生になりたい人が減っている!?」(21年3月)でも論じました。
重要なことは、教員不足解決のためとはいえ「特別免許状」や、教員免許を持つ人を採用できない場合に例外的に認められる「臨時免許」の活用に安易に頼らないことです。それは止むを得ない場合にのみ限定して、慎重に実施されるべきでしょう。
特別免許状や臨時免許に安易に頼ることは、知識や専門能力において十分でない教員が教壇に立つことで教育の質を低下させる危険性があるだけでなく、教職の価値を低下させ、教員不足の解決を遠ざけてしまう可能性すらあります。
子どもたちや若者を育てる、重要な仕事を担っているのが教員です。創意工夫をこらした授業や日々の交流を通して、子どもたちや若者が成長する場面に直接遭遇することができる教員という仕事には、他の職業にはない素晴らしい魅力や価値があります。教員という仕事がブラックなのではありません。その素晴らしい魅力や価値を失わせているブラックな労働環境こそが問題なのです。
教員不足を解決するための政策として求められるのは、免許状の「規制緩和」や「ハードルの引き下げ」ではありません。その仕事の重要性に見合った労働条件の改善や待遇の向上を進め、教員という仕事の本来の魅力を再生させる政策以外にはあり得ない、と私は考えます。