「生理の貧困」が今、大きな社会問題となっています。
きっかけとなったのは、女性の生理(月経)に関する啓発などに取り組む任意団体「#みんなの生理」が実施した「日本の若者の生理に関するアンケート調査」。国内の高校、短期大学、四年制大学、大学院、専門・専修学校などに在籍し、過去1年のうちに生理を経験した人を対象に、2021年2月17日からオンラインでアンケート調査を実施、3月2日までのおよそ2週間で671件の回答がありました。以下は、その調査報告からです。
過去1年で、金銭的理由で生理用品の入手に苦労したことがあるかとの質問に「ある」と答えた人は20.1%に上りました。全体の5分の1の女性が、生理用品の購入に困難を抱えているということになります。過去1年で、金銭的な理由からトイレットペーパーなど生理用品でないものを(代用品として)使ったことがある人は27.1%でした。そして、生理用品を交換する頻度を減らした経験のある人は37%に達しています。生理用品の入手で苦労している女性は、ごく一部ではないことが分かります。
この問題が第一に提起したのは、コロナ禍による貧困の深刻化です。
全国大学生活協同組合連合会が20年10〜11月に行った「第56回学生生活実態調査」では、学生の貧困化を詳細に明らかにしています。
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調査結果は、自宅生と下宿生に分けて発表されました。それによると、20年の自宅生の1カ月あたりの収入は6万2820円と、19年の6万7480円よりも4660円減少しています。年間では5万5920円の減少となります。収入減少をもたらしたのは主としてアルバイト収入の減少です。1カ月あたりのアルバイト収入は3万7680円と、19年の4万1230円から3550円減少、年間では4万2600円の減少となります。
また、20年の下宿生の1カ月あたりの収入は12万2250円と、19年の12万9860円よりも7610円減少しています。年間では9万1320円の減少となります。収入減少をもたらしたのは、ここでも主としてアルバイト収入の減少です。1カ月あたりのアルバイト収入は2万6360円と、19年の3万3600円から7240円減少しています。1970年以降で前年からの減少額が最も大きくなりました。年間では8万6880円の減少となります。
収入が減少したのですから、支出を減らす必要があります。支出についての調査結果を見ると、注目されるのが食費の減少です。自宅生の場合、2020年の1カ月あたりの食費は1万670円と19年の1万3850円よりも3180円減少しています。年間では3万8160円の減少となります。食費の支出構成比は17.2%と1970年以降最小となりました。
下宿生の場合、2020年の1カ月あたりの食費は2万4570円と19年の2万6390円よりも1820円減少しています。こちらも1970年以降で前年からの減少額が最も大きくなりました。年間では2万1840円の減少となります。自宅生の支出費目で最も減少し、下宿生の支出費目では2番目に減少したのが食費となっています。学生が食費を減らさなければならない状況に追い込まれているのは明らかです。
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金銭的理由から生理用品が買えないという問題に対して、「スマホは持てるのに生理用品を買えないのか」という意見をネットで見かけました。しかし今の若者にとって、スマホは友人とのコミュニケーションや情報収集、就職活動、そして生活支援を受ける場面でも必須の生活インフラです。もはや贅沢品ではなく、生理用品同様に生活必需品となっているのですから、この意見は現実を捉えていない暴論でしょう。
「買うものの優先順位を間違えているのでは」という意見もありました。「学生生活実態調査」の結果で明らかなように、食費までも削らなければならない状況がすでに広がっているのですから、その意見も的外れです。
それよりも収入の減少によって、学生がかつてないほど困窮している状況を見るべきです。東京私大教連の「私立大学新入生の家計負担調査2020年度」によれば、1カ月の仕送り額から「家賃」をのぞいた生活費は1 万 8200 円で、1日の生活費に換算すると607円という、調査開始以来最低のレベルとなりました。ピークだった 1990 年度 の1日2460 円の4分の1未満です。1日の生活費が607円ということは、1食200円に抑えても3食とれば600円となり、7円しか残りません。
しかも、この額は平均値です。平均未満の学生は数多く存在しますから、生理用品を買えずに困っている人がいるのは不思議でも何でもありません。むしろ生活必需品かつ衛生用品の費用負担が、多くの学生に重くのしかかっているという現実を、私たちは認識する必要があると思います。
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この問題が第二に提起したのは、生理についての理解不足や偏見です。「生理の貧困」というワードが大きな話題となる中で、当事者である女性たちからネット上に多くの声が上がりました。
「家計を管理している夫が生理用品の購入を許してくれない」
「初潮を迎えたけど恥ずかしくて親に言えない」
「小・中学生の頃、親に生理用品を買ってもらえなかった」
「父親に初潮があった事を知られたくない。絶対に父親に伝わるから母親にも言えない」
「母親に生理を汚いと言われた」
「生理は痛いのが当たり前と親に言われ病院受診できない」