植物性の原材料を用い、食肉の見た目や風味、食感に似せて作られた加工食品。フェイクミート、プラントベーストミート、大豆ミート(ソイミート)などとも呼ばれる。食肉より低脂肪・低カロリーであることから、健康・美容上の理由で選択される他、近年は単にベジタリアンのための代替品にとどまらず、気候危機(畜産業は気候危機の原因のひとつである)や人口増大に伴う食料不足への対応策としての需要も高まっている。
主に豆類(大豆、えんどう豆、そら豆など)、穀物(小麦、玄米など)、こんにゃく、きのこ等で作られるが、卵白、乳製品、肉エキス等動物由来の材料が使用されることもあり、代替肉すなわち100%植物性とは限らず、食品表示の確認が必要である。大きく分けて乾燥タイプ、レトルトタイプ、冷凍食品がある。
植物性の原材料で肉に似せた料理を作ること自体は、宗教上の理由から肉食を避ける目的で古くから行われている。たとえば、東アジアでは仏教の精進料理において豆腐等の大豆加工食品や小麦グルテンなどが肉の代わりとして使われてきた。中世ヨーロッパでも、キリスト教における潔斎(身を浄めること)の時に、肉食を避けるため小麦やドライフルーツ、ナッツ等を肉の代用とした例がある。
19世紀になると、欧米で起こった近代ベジタリアン運動が肉食の弊害を訴えるようになり、ベジタリアンの需要を満たす代替肉が商品化されるようになった。1890年代には、ベジタリアン食を推進するキリスト教の一派「セブンスデー・アドベンチスト」の療養所の経営者として健康食品の開発を行ったジョン・ハーヴェイ・ケロッグが、ピーナッツや小麦グルテンを主原料とする加工代替肉を製造。その後、同教団を母体とする企業によって代替肉の開発・販売が続けられ、食品メーカーなども市場に参入してきた。
近年は、フードテクノロジーの進化によって代替肉の味や食感が飛躍的に進化していることで、消費が拡大している。特に2010年前後から、「ビヨンド・ミート(Beyond Meat)」「インポッシブル・フーズ(Impossible Foods)」等、ビル・ゲイツなどの有名投資家から資金を得た米国カリフォルニア州発のスタートアップ企業が食肉と遜色ない商品を開発し、大手ファストフードチェーンでも採用されるなど注目を集めている。こうした動きを受けて、世界各国で代替肉の商品開発が活発に進められており、日本でも2020年前後から大手企業による代替肉市場への参入が相次ぎ、スーパーマーケットでも手に入る一般的な商品となりつつある。
さらに、人手不足等で食肉供給が滞ったことやさらなる健康志向の高まりといったコロナ禍の影響も、欧米を中心に代替肉需要を増大させた。 米国フォーチュン誌の調査によれば、代替肉の世界市場規模は49.8兆米ドル(2020年)から108兆米ドル(2028年)へと拡大することが予想されるなど、一層の需要増が見込まれている。