思春期以降、ほとんどの女性はなんらかの月経(生理)トラブルを経験することになる。「みんな我慢しているから、自分も我慢しないと」「これくらいは普通のこと」などとやり過ごしてしまうことも多いが、症状によってはちゃんと対処すればぐんと楽になったり、放置すると深刻なダメージにつながったりすることもある。どのような症状の場合に婦人科を受診すべきなのか、また月経のトラブルと上手につきあう方法について、東京・高田馬場「桜の芽クリニック」院長・西弥生先生にうかがった。
Q1.中学生になりましたが、初潮がきません。周りの子はみんなきているのに……。
Q2.20代です。妊娠の心当たりもないのに生理が止まってしまいました。待っていればそのうち戻ってくるものでしょうか。
Q3.生理は毎月くるものだと教わったのに、次の生理まで1カ月以上空いてしまうことがよくあります。どのくらいの周期がふつうですか?
Q4.前回から1カ月も経たないのに、また生理がきてしまいました。早すぎないか不安です。
Q5.生理が1週間以上続くので、毎月とても憂鬱です。
Q6.出血量が多く、ナプキンがもつかどうかいつも気になってしまいます。
Q7.生理中でもないのに出血しました。病気でしょうか。
Q8.生理痛が立っていられないほどつらいです。
Q9.いつも生理前になると、イライラや頭痛ががひどくなるので困っています。
Q10.生理中のセックスにはどのようなリスクがありますか?
女性生殖器の位置と名称(正面図)
Q1.中学生になりましたが、初潮がきません。周りの子はみんなきているのに……。
一般的には10〜15歳で月経が始まることが多く、15歳を過ぎてもこない場合は「遅発月経」、18歳まで月経がこないと「原発性無月経」という診断になります。目安としては、15歳を過ぎても初潮がこない人は一度婦人科を受診しておくと安心です。18歳までには自然に月経が始まることが多いので、だいたいは身体の成長度や遺伝的要因、卵巣の発達状況等を考慮しながら、経過観察していきます。
ただし、第二次性徴(胸のふくらみ、恥毛・腋毛など)の兆しがまったく見られない人や、ごく稀な例ですが卵巣機能が著しく低い人など、そのまま待っていても排卵が起こりそうにないと考えざるを得ない人もいるので、自己判断せず受診してください。
婦人科では個々人の状態に応じてですが、ホルモン剤を投与して初潮を起こすこともできます。ホルモン剤の投与により、第二次性徴の遅れが改善されるほか、女性ホルモンによって保たれる骨の健康にも良い効果が得られます。特に思春期は骨の成長にとって大切な時期なので、骨粗鬆症(こつそしょうしょう)予防のためにも女性ホルモンが不足しないようにすることが必要です。ホルモン剤には様々な種類があり、副作用にも個人差が見られます。医師の指示の下で適切な投薬を受けましょう。
Q2.20代で、妊娠の心当たりもないのに生理が止まってしまいました。待っていればそのうち戻ってくるものでしょうか。
40代以降で月経が止まったのであれば、閉経の可能性がありますが、それ以下の年代ならほかの原因が疑われます。
まず、ストレスや睡眠不足、体重減少等が影響して月経周期が不規則になることは珍しくありません。このほかに、卵子がうまく排卵されずに卵巣が腫れてしまう「機能性嚢胞(のうほう)」が原因で月経が遅れることもあります。これは超音波検査ですぐ判明しますし、だいたいは特別な治療をしなくとも自然に腫れが引いていきます。
通常、様子を見ていれば自然と月経が復活することも多いのですが、妊娠以外の理由で3カ月以上月経が来ないときは婦人科を受診するようにしましょう。
長期間にわたって月経が止まる主な原因のひとつに、過度なダイエットがあります。特にダイエットをしていなくても、たとえば産後、十分な栄養を摂れずに10キロ以上痩せて、気づけば月経がいつまでも再開しないという人もいました。
閉経
40〜50歳代で卵巣の機能が低下し、排卵・月経が起こらなくなること。
月経周期
生理周期。月経の初日から、次の生理の前日までの日数を指す。
BMI
体重(kg)を、身長(m)の2乗で割った数値。肥満や痩せなど、体形の目安になる。
子宮内膜
子宮の内側の組織。月経による出血が終わるころから、女性ホルモンの作用によって増殖しはじめて受精卵の着床に備える。着床しなければ次の月経時に経血として排出される。
基礎体温
生命維持のために必要な最小限のエネルギーのみを消費している心身ともに安静な状態、つまり睡眠中の体温のこと。目覚めた後、活動を始める前に計測する。
子宮内膜症
子宮内膜組織が子宮内腔以外の場所で増殖する疾患。
卵巣チョコレート嚢胞
卵巣嚢腫の一つで、正式名称は卵巣子宮内膜症性嚢胞。卵巣の内部で子宮内膜症が発生することで、月経のたびに少量の経血が生まれ、チョコレート状になって溜まる。