陰嚢水腫
【こんな症状があったら要注意!】痛みがない精巣の腫れや陰嚢のふくらみ
特徴:「精巣水溜」とも呼ばれ、陰嚢内に水が溜まり、陰嚢がふくらんだ状態。先天性は珍しくない。胎児~乳児期に、精巣が腹部から陰嚢の中へと移動するのに伴い、腹腔と精巣をつなぐ通路(腹膜鞘状〈しょうじょう〉突起)が生じる。腹膜鞘状突起は通常、生まれるまでに自然に閉じて、腹腔と陰嚢内の空洞(精巣鞘膜〈しょうまく〉)に分離する。しかし腹膜鞘状突起がふさがりきらずにいると、腹膜の漿液が陰嚢に入り込んで溜まり、陰嚢水腫となる。なお、腹膜鞘状突起がさらに大きく開いている場合は、腸が鼠径部や陰嚢内の腹膜鞘状突起に落ち込んできて鼠径ヘルニア(脱腸)になる。陰嚢水腫も鼠経ヘルニアも陰嚢がふくらんで見えるが、陰嚢水腫は暗い部屋で懐中電灯やペンライトの光を陰嚢に当てると、赤く透けて見える。超音波でも診断がつけられる。思春期以降に起こる後天的な陰嚢水腫では、腹膜鞘状突起が閉じた状態で精巣鞘膜に水が溜まる。原因不明だが、基本的には悪性ではない。
症状:痛みはないが、水が溜まっている側の陰嚢が大きくなる。
治療:先天性の陰嚢水腫が見られても、新生児や1歳未満の乳児ならば、ほとんどが成長するにつれて自然と腹膜鞘状突起の開口部が閉じて、溜まった水も消失する。3歳頃になっても陰嚢がふくらんでいたり、痛みがあったりする(鼠径ヘルニアを起こしている可能性がある)場合は、腹膜鞘状突起の開口部を糸で結び、閉じる手術が検討される。なお、腹膜鞘状突起が閉じていない段階で水を抜いても、すぐにまた腹膜から水が降りてきてしまうため、効果がない。後天性の陰嚢水腫は自然に治ることはないため、必要な場合は吸引して水を抜いたり、手術で精巣鞘膜の過剰な部分を切除したりする。
精巣(精索)捻転症
【こんな症状があったら要注意!】(主に思春期前後に起こる)睡眠時の突然の陰嚢の激しい痛み
特徴:急に陰嚢(主に左側)が痛んだり腫れたりする「急性陰嚢症」の一種で、精巣から腹腔へとのびる血管や精管などが束のようになっている部分(精索〈せいさく〉)が雑巾を絞ったようにねじれて締め付けられ、精巣に血液が送られなくなる。発症後6~12時間以内に治療しないと精巣が壊死(えし)・萎縮し、精巣摘出が必要となる。将来の妊孕性にも影響するため、手術可能な泌尿器科や小児外科を早急に受診し、治療を受けることが非常に重要。原因は不明で、出生前後から新生児期にも起こるが、多くは精巣が急速に発達する思春期前後で、睡眠中(夜間から明け方)に突然発症する。冬期によく見られるほか、陰嚢の打撲がきっかけになることもある。
症状:突然の激しい陰嚢の痛み。多くは夜間から明け方にかけての睡眠時に起こる。痛みとともに陰嚢の腫れ、下腹部の痛み、吐き気、嘔吐を伴うこともある。
治療:他の疾患との違いなどを超音波検査で確認し、緊急手術でねじれを解消し、再びねじれないよう精巣を陰嚢内に固定する。予防のため、痛みがない側の精巣も同様に固定する。手術前に手でねじれを戻すことも試みられるが、成功した場合も、追って精巣を固定する手術を行う。既に精巣が壊死している、また術後も血液が精巣に送られない場合は精巣を摘出する。
精巣付属器捻転症
【こんな症状があったら要注意!】(主に思春期前に起こる)昼間の突然の陰嚢の痛み
特徴:急性陰嚢症の一種。