精巣垂(せいそうすい)、精巣上体垂(せいそうじょうたいすい)という、精巣や精巣上体に付属している小さな突起がねじれる病気。主に思春期前の8~11歳頃、昼間の活動中に起こりやすい。痛みは突然起こり、比較的軽いが急激に痛むこともある。ねじれた精巣垂・精巣上体垂が陰嚢の皮膚を通して青く見えることもある(「ブルー・ドット・サイン」という)。精巣捻転症と異なり、精巣に影響を与えることはないが、症状が似ており、区別が難しい。
症状:主に昼間の突然の陰嚢の痛みと腫れ。
治療:鎮痛薬投与や安静にすることで、自然と治癒することが多い。痛みが続く場合は、ねじれている精巣垂や精巣上体垂を摘出する(摘出しても、精巣機能への影響はない)。
精巣上体炎(副睾丸炎)
【こんな症状があったら要注意!】精巣上体の腫れ、精巣の横に硬いしこりがある
特徴:急性陰嚢症の一種で、精巣の横にある精巣上体が感染を起こして腫れたり、痛みが出たりする。尿道や前立腺で感染した細菌が精管を通じて精巣上体に達すると発症する。若い世代では性感染症(クラミジア、淋菌など)が原因となることが多く、尿道炎を併発していると尿道から膿(うみ)が出る。高齢者の場合は、大腸菌などの細菌による膀胱炎や前立腺炎が波及して、精巣上体炎を起こすことが多い。一方、小児では、尿道からの感染ではない原因不明のものが多く、アレルギー性紫斑(しはん)病、先天性疾患が原因のこともある。精巣上体炎が悪化すると、精子の通り道がふさがって男性不妊になる可能性がある。
痛みをあまり伴わないしこりは精巣上体結核や精巣がんの可能性もあり、泌尿器科への早期受診が求められる。
症状:精巣上体が腫れ(基本的に片側だが両側とも腫れることもある)、急な痛みや発熱を伴うことが多い。精巣の横に硬いしこりがある。尿道から感染していると、尿の回数が多くなったり、排尿時に痛みを伴ったりすることがある。小児では発熱しないことが多い。
治療:精巣捻転症ではないことを確認し、抗菌薬の内服や点滴を行う。必要に応じて、患部の冷却などの対症療法も取られる。
精巣炎
【こんな症状があったら要注意!】思春期以降におたふく風邪(流行性耳下腺炎)にかかってから3~5日後の精巣の急な痛みと腫れ
特徴:ウイルス(主におたふく風邪の原因であるムンプスウイルス)感染や精巣上体炎によって精巣に炎症が起こり、陰嚢の強い痛みと腫れ、発熱、倦怠感が生じる。両側の精巣が精巣炎になったり、症状が長引いたりすると、精子形成障害を起こして男性不妊につながる可能性がある。精巣捻転症など他の病気と区別するために、自己診断せず、泌尿器科や感染症内科で診察を受けること。また、思春期以降におたふく風邪に感染した中で約20~30%が精巣炎になると言われており、思春期前におたふく風邪にかかっていなかったり、予防接種を受けていなかったりする成人男性は感染に注意する。
症状:思春期以降におたふく風邪にかかってから3~5日後に見られる、精巣の急な痛み、腫れ、発熱など。
治療:ムンプスウイルスが原因の場合は治療薬がないため、鎮痛剤や患部の冷却などの対症療法を行う。
精索静脈瘤
【こんな症状があったら要注意!】腟内に射精できているのにパートナーがなかなか妊娠しない
特徴:精巣の中にある静脈に血液が逆流したり流れが悪くなったりして、陰嚢の精索の中にある蔓状の静脈(蔓状静脈叢〈つるじょうじょうみゃくそう〉)が腫れ上がり、静脈瘤を形成した状態。精索静脈瘤のほとんどは左側で生じる。精索静脈瘤があると精子をつくる機能が低下したり、精子のDNAが損傷したりするなど、男性不妊につながる可能性がある。そのため、不妊の相談がきっかけで見つかることが多い。
10~15歳頃から増え始める。成人男性の約15%に見られ、男性不妊の約30~40%は精索静脈瘤が原因と言われる。手術により、半数以上に精液所見(精子の濃度や運動率)の改善が見られる。
症状:無症状であることが多いが、陰嚢や鼠径部の痛みや違和感が生じたり、陰嚢が膨らんで見えたりすることもある。症状が進むと、見た目や触ってわかるほど陰嚢の表面がでこぼこしてくる。
治療:痛みや違和感が強い場合や、不妊の原因となっている可能性がある場合は、血液が逆流してくる静脈を糸で縛って切る手術を行う。
精巣がん
【こんな症状があったら要注意!】20~30代で、痛みはないのに精巣が腫れたり硬くなったりする
特徴:精巣にできる腫瘍で、20~30代に多く、特に15~35歳の男性では最も多いがんだが、日本では10万人に1人の罹患率で稀ながんと言える。原因は不明だが、停留精巣や片側の精巣腫瘍の既往歴、家族歴などがリスク因子とされる。診断において腫瘍マーカーの役割は重要で、CTなどで転移の有無を確認する。