病理組織の種類によって「セミノーマ(精上皮腫。精巣がんのタイプの中で最も多く、35~50%を占める)」と、「非セミノーマ(精上皮腫以外の精巣がんの総称)」に大別できる。治療方針は、この病理組織の結果によって決定される。セミノーマは化学療法と放射線療法がともに有効だが、非セミノーマは化学療法は有効だが放射線療法は有効ではない。
5年生存率は、ステージⅠで95~100%、ステージⅡで80~90%、ステージⅢでも70%と比較的良好。セミノーマより非セミノーマの方がやや予後が悪く、短期間で他の臓器に転移しやすいが、多くの場合、化学療法で治癒が期待できる。治療により男性不妊になる可能性がある場合は、治療前に精子を凍結保存することが検討される。
症状:初期はほとんど症状がなく、痛みはないのに精巣が腫れたり、硬くなったりすることがある。下腹部の重圧感、鈍痛を伴うこともある。精巣に触ると、ずしりとした重みを感じる。転移すると転移した部位に痛みなどの症状が生じる。がんが原因のホルモン異常により、乳首に痛みを感じたり、乳房がふくらんできたりすることもある。
治療:精巣と精索を摘出する手術を基本に、必要に応じて腹部リンパ節の切除を行い、放射線療法や化学療法を行う。転移がないステージⅠでは、手術のみで追加治療を行わないこともある。
持続勃起症(持続陰茎勃起症)
【こんな症状があったら要注意!】性的刺激・性的興奮と無関係である勃起が4時間を超えて持続する。
特徴:比較的稀な疾患で、50歳未満に多い。虚血性(静脈性)持続勃起症と非虚血性(動脈性)持続勃起症に分類され、虚血性持続勃起症は、薬物(向精神病薬、降圧薬、勃起不全の治療薬など)や、血液がん(白血病や悪性リンパ腫)が原因であることが多い。特に血液がんによる虚血性持続勃起症は若年層に多いため、小児で痛みを伴う勃起が持続する場合は、血液がんの存在を疑う必要がある。また、虚血性持続勃起症の場合、経過が長くなると勃起機能が失われる可能性が高くなるため、 早急に治療を開始する必要がある。
非虚血性持続勃起症は虚血性に比べて症状が軽く、その多くは会陰(えいん)部(外陰部と肛門の間の部分で、男性の場合、陰嚢の後ろから肛門までのこと)の打撲(外傷)後、しばらく時間が経過してから発症する。非虚血性持続勃起症と診断された場合には、治療を急ぐ必要はない。
症状:性的刺激・性的興奮と無関係である勃起が4時間を超えて持続する。虚血性持続勃起症では、強い痛みを伴う。
治療:虚血性持続勃起症では、早急に治療を開始する必要があり、陰茎内にたまっている血液の吸引、生理食塩水での洗浄、血管収縮薬の注入等の処置を行う。改善しなければ、血液の流出路(陰茎海綿体から血液が出ていく通り道)を確保する手術が必要となる。非虚血性持続勃起症は、患部の圧迫や冷却などの処置で経過を見ることが多いが、改善しない場合は、打撲(外傷)によって出血している陰茎内の動脈をふさぐ手術(塞栓〈そくせん〉術)を行うこともある。
LOH症候群(加齢男性性腺機能低下症候群)
【こんな症状があったら要注意!】中年以降で性欲や勃起力低下、うつ、認知機能の低下、ほてり、全身倦怠感、筋肉や関節の痛み、筋力低下、不眠など
特徴:加齢に伴い、男性ホルモン(テストステロン)の分泌量が低下して、心身の活力と性機能が損なわれ、QOL(Quality of Life、生活の質)に大きな影響を与える。いわゆる「男性更年期」とも呼ばれる。閉経(およそ50歳頃)前後10年とされる女性の更年期と異なり、はっきりと決まった時期はなく、40代以降の男性であればいつでも起こりうるが、30代にも見られることがある。男性ホルモンは筋肉が多い男性らしい体つきをつくるほか、性機能、認知機能、血管の健康にも影響している。このため、男性ホルモン分泌量の低下はうつや性欲・勃起力の低下、認知機能の低下、骨粗鬆症、心血管疾患、不眠など多様な症状を引き起こすほか、内臓脂肪の増加をもたらし、メタボリック症候群のリスクを高める。男性ホルモンの値は血液検査で調べることができ、AMSスコアと呼ばれる問診票と併用して診断される。