症状:中年以降の性欲や勃起力の低下、うつ、認知機能の低下、全身けん怠感、いらいらする、不眠など。
治療:男性ホルモンの値があまり低下しておらず、症状が軽い場合は、生活習慣の改善を促し、補中益気湯などの漢方薬、勃起障害にはED治療薬、うつや不安症状には抗うつ剤、抗不安剤などを投与する対症療法を行う。男性ホルモンの値が低く症状が重い場合は、男性ホルモン補充療法(TRT:Testosterone Replacement Therapy)を行う。TRTで使用する薬剤には経口剤、注射剤、皮膚吸収剤などがあるが、このうち日本で保険適用となるのは注射剤のみで、症状が改善するまで2~4週おきに筋肉注射を行う。
前立腺肥大症
【こんな症状があったら要注意!】50代以降の尿のトラブル
特徴:前立腺が肥大することで尿道が圧迫され、さまざまな尿トラブルをもたらす。原因は不明だが、男性ホルモンの低下などホルモンの変化が影響していると考えられており、50代以降の男性に多く見られる。症状が軽度で、あまり生活に支障がない場合は、予防的措置も含めて特に治療せず、経過観察を行う。
症状:排尿症状(尿の出が悪い、途中で尿が途切れるなど)、蓄尿症状(頻尿、切迫性尿失禁など)、排尿後症状(排尿後に尿が出るなど)が単独で、または重複してあらわれる。進行すると血尿や尿路感染、膀胱(ぼうこう)結石、腎機能障害を引き起こすこともある。
治療:尿を通りやすくしたり、前立腺を小さくしたりする薬を用いる。薬物治療で改善が見られなかったり、進行して腎機能障害などを起こしていたりする場合は、手術で前立腺を切除、もしくはレーザー治療を行う。なお、症状の緩和には、水分を取りすぎない、コーヒーやアルコールを控える、適度な運動など生活習慣の見直しも役に立つ。
前立腺がん
【こんな症状があったら要注意!】50歳以上でPSA(前立腺特異抗原)測定値が4ng(ナノグラム)/ml以上
特徴:近年増えているがんで、男性では現在罹患数1位だが、死亡数では6位にまで下がる。増加の理由は、高齢化や食生活の欧米化、PSA検査の普及で見つけやすくなったことなどが考えられている。遺伝リスクもある。初期はほとんど無症状のため、PSA検査で発見されることが多い。進行は比較的遅く、症状が出ないまま前立腺がん以外の原因で死亡するケースも見られる。
前立腺内にとどまった早期の前立腺がんでは、主に手術や放射線治療が選択され、前立腺周囲に浸潤したり、骨やリンパ節、他臓器へ転移したりした進行前立腺がんでは、ホルモン療法や化学療法などが選択される。手術方法は腹腔鏡手術やロボット手術など体に負担が少ないものが開発されている。これらの治療により、勃起障害、射精障害や尿もれ(腹圧性尿失禁)などの後遺症が生じることが多いが、薬物等で治療することができる。また、勃起機能温存を希望する場合は、手術時に海綿体神経の温存を行う。
症状:がんが前立腺内にとどまっている初期は、多くが無症状だが、尿の出が悪い、頻尿などが見られることもある。これらの症状は前立腺肥大症とよく似ており、実際に前立腺肥大症を合併している場合もある。がんが前立腺の周囲(尿道や膀胱)に浸潤すると血尿が出たり、骨に転移すると骨の痛みや骨折が起こったりする。