症状:男性では、感染機会から2~7日後、尿道のかゆみ、外尿道口から黄色い膿(うみ)が出る、激しい排尿痛、外尿道口が赤くなったり腫れたりするなどの症状が出る。排尿時の激しい痛みは、感染によって尿道に炎症が起こり、尿道内が狭くなるために生じる。尿道の奥に淋菌が入ると、精巣上体炎を起こして、高熱、足の付け根のリンパ節の腫れなどが生じ、不妊症に至ることもある。
女性で症状が出る場合、子宮頸管炎、骨盤内への感染によりおりものが増えたり、緑黄色のおりものが出たり、下腹部痛、膀胱炎のような症状、不正出血などが見られる。症状が進むと、子宮内膜炎、卵管炎、腹膜炎、子宮外妊娠、不妊症などにつながる。淋菌性尿道炎や淋菌性バルトリン腺炎になり、感染した局所から膿が出ることもある。
治療方法:抗菌薬(注射、点滴等)を使用するが、耐性菌の場合には治療薬が限られることもある。
性器ヘルペス
特徴:単純ヘルペスウイルス1型(HSV-1型)または2型(HSV-2型)の感染により性器に痛みを伴う浅い潰瘍または小水疱(すいほう)ができる。性器ヘルペスは主に2型による感染だが、口唇ヘルペス(主に1型で起こる)もオーラルセックス等で性器に感染する。女性の性感染症ではクラミジアに次いで多く報告され、男性でも3番目に多い。また、男性はオーラルセックスによる感染が増加している。
潜伏期間は3~7日で、ウイルスが性器に感染すると神経をさかのぼって腰仙髄(ようせんずい)神経節(骨盤内の神経節)に潜伏感染する。無症状であることも多いが、ストレスや疲労などなんらかの刺激によってウイルスが活性化すると性器の皮膚や粘膜に発症する。他のヘルペスと同じく、治療によって症状がなくなってもウイルスは体内に残り、再発を繰り返すこともある。性器ヘルペスの約80%が再発例である。
年間新規感染者数:9413件(2019年。定点報告)
症状:症状が現れないことも多いが、感染機会から2〜10日後に性器に直径1~2ミリメートルほどの水疱やただれが複数できる、痛み、かゆみ、発熱、足の付け根のリンパ節が痛んだり腫れたりするなどの症状があり、痛みが強い場合は、女性では排尿や歩行が困難になることもある。
再発時の症状は初感染のときよりも症状は軽いが、性器のかゆみや違和感、痛みなどが生じることが多く、4日~2週間で治癒する。再発する数日前あるいは数時間前から、下肢痛、腰痛、局所のかゆみ、違和感、疼痛などの前兆が起こることもある。
治療方法:2~3週間で自然に治るが、抗ウイルス剤の投薬により1~2週間で治すことができる。
「1年間に6回以上の再発を繰り返す患者さんには、再発症状が出ていないときも継続的に服用し、ウイルスの増殖を抑える薬を保険適応で処方できます。これにより、再発抑制だけでなく、パートナーへの感染を防ぐこともできます」(尾上先生)
性器カンジダ症(真菌症)
特徴:真菌(カビ)の一種であるカンジダ属によって起こる性器(外陰・腟)の感染症。男性がかかることは少なく、患者はほぼ女性である。セックスによる感染は約5%で、体内に存在することも多く、感染経路は多様。潜伏期間は長く、数年に及ぶこともある。腟の洗浄などによって腟内に生息する常在菌がいなくなり、自浄作用がなくなったことで発症したり、抗生剤や風邪薬の服薬、抵抗力が落ちた時など、なんらかの誘因によって発症したりする。
症状:女性では、外陰部や腟の強いかゆみ、ヨーグルト状の白いおりもの、おりものの臭い、性器の痛み、性交痛など。男性の場合は亀頭包皮炎として発症し、亀頭が赤くただれたり、かゆみが出たりする。水疱が出るときもある。
治療方法:抗真菌剤の軟膏やクリーム、腟錠(腟坐剤)など。1~2週間で大半の患者が治癒する。
ケジラミ症
特徴:吸血性昆虫であるケジラミ(体長0.8~1.2mm)が寄生することで発症する。主に性行為で陰毛が直接接触することで感染するが、毛布やタオル、シーツ等を介して感染することもある。1匹のケジラミは1カ月ほどの生存期間中に30~40個の卵を産み、7日前後で孵化して増殖していく。ヒトに寄生するシラミには3種類あるが、他の2つ(アタマジラミ、コロモジラミ)は性的接触が主な感染経路ではないので、性感染症に数えられていない。血を吸ったケジラミは茶褐色になるため目視で確認できるが、そうでない場合は見つけにくい。
症状:感染から1~2カ月後、ケジラミが寄生した体毛が生えている場所にかゆみを生じる。かゆみの原因は、ケジラミが吸血する際に人間の体内に入りこむ唾液成分だと考えられている。かゆみの程度には個人差がある。また、症状が出ない場合も多い。
治療方法:市販薬のシラミ駆除シャンプー(「スミスリンLシャンプー」、「スミスリンパウダー」〈ともに登録商標〉など)を寄生箇所に使用する。卵には効果が弱いため、卵が孵化する期間を見込み、3~4日間ごとに3~4回、使用を繰り返す。パートナー間、また親子間での感染の可能性もあるため家族での治療が必要となる。
定点報告
※感染症法により、地方自治体が定める国内約1000カ所の医療機関には、感染例を保健所に報告することが義務づけられている。
全数報告
※感染症法により、全感染例を保健所に報告することが医師に義務づけられている。
AIDS
Acquired Immunodeficiency Syndrome