特徴:A型肝炎ウイルス(HAV)が肝臓に炎症を起こす感染症で、感染力は強い。感染者の便に含まれるHAVが飲み水、野菜、魚、牡蠣やアサリといった貝類などを汚染し、それらを摂取する、あるいは感染源を触った手で口に触れることで感染するケースが多い。特に衛生状態が悪い国や地域では注意が必要だが、リミング(肛門を舐める口腔性交)や肛門性交による感染も増えてきている。予防はコンドームではできず、手洗いを基本とする他、ワクチン(3回接種でほぼ100%の免疫ができる)が有効。
年間新規感染者数:425件(2019年。全数報告)
症状:感染機会から2~7週間で、発熱、全身倦怠感、吐き気、嘔吐などの症状が現れ、続けて黄疸(おうだん)の症状が出るのが特徴。多くは2~3カ月程度で自然に治り、慢性化することも少ないが、稀に重症化(劇症肝炎)する。乳幼児が感染した場合は無症状か軽症ですむことが多く、一度感染すると免疫ができる。
治療方法:自然治癒まで安静に過ごす他、対症療法として点滴や薬を用いる。
B型肝炎
特徴:B型肝炎ウイルス(HBV)が肝臓に炎症を起こす感染症で、感染力は強い。HBVは血液、精液、腟分泌液等に多く含まれ、感染経路は性行為感染、母子感染、血液感染である。「急性」と「慢性」があり、成人が初めて感染して発症したものが「急性B型肝炎」と呼ばれる。急性B型肝炎として症状が出るのは3分の1程度だが、自覚症状が出ないまま放置しておく中で慢性B型肝炎に進行し、肝硬変、肝がんになることもある。また、母子感染したケースで慢性化することもある。
予防はコンドームが基本で、ワクチン(3回接種)接種も推奨され、乳幼児の定期予防接種に含まれている。
年間新規感染者数:257件(2019年。全数報告)
症状:急性の場合、感染機会から1~2カ月程度の潜伏期間を経て、倦怠感、食欲不振、濃い色の尿が出る、発熱などの症状が出て、続けて黄疸が現れる。劇症化(1%以下)しなければ、1カ月程度で自然に治る。
慢性の場合は、症状が出ないままの状態が続くことが多いため、肝硬変、肝がんに移行することもある。
治療方法:急性の場合はほとんど自然治癒する。慢性B型肝炎は、免疫を調節する作用のあるインターフェロンと、ウイルスの増殖を抑える薬を服用し、肝機能障害の進行を遅らせる。
「B型肝炎ウイルスに成人が感染した場合、慢性B型肝炎に進行することはほとんどないと言われてきたのですが、近年は約10%が慢性肝炎に移行する新たなタイプのウイルス(遺伝子型A)の出現により、特に都市部の若者を中心に慢性化するケースが増えてきています。このウイルスはMSM(Men who have sex with menの略。同性間または両性間で性的接触をする男性のこと)の間での感染も多く、HIVとの重複感染も多数報告されていますので、積極的なワクチン接種をおすすめします」(尾上先生)
C型肝炎
特徴:C型肝炎ウイルス(HCV)が含まれた血液を介して感染し、肝臓に炎症を起こす感染症。性行為では、アナルセックス(肛門性交)などで粘膜が傷つくことにより感染する。感染しても無症状のことが多く、また感染者の60~70%が慢性肝炎に移行し、放置しておくと肝硬変、肝がんへと進行する可能性がある。C型肝炎を予防するワクチンはなく、定期的な検査による早期発見が重要。
年間新規感染者数:31件(2019年。全数報告)
症状:感染機会から2~3カ月で急性肝炎を起こすが、体がだるい、食欲不振など軽い症状であることが多い。
治療方法:安静にして食事療法、投薬などを行う。自然治癒せずに慢性化したときは、免疫を調節する作用のあるインターフェロンの大量投与により高い治療効果が認められる。
非クラミジア性非淋菌性尿道炎
特徴:クラミジアと淋菌以外の菌が起こす尿道炎で、性行為によって感染する。原因と考えられる菌にはさまざまなものが考えられ、ヘルペスウイルスやアデノウイルスなどの他、マイコプラズマ、ウレアプラズマが挙げられている。「ピンポン感染(パートナーとの間で感染させあうこと)」を防ぐために、パートナーとの同時治療が必要。
症状:クラミジアと似た症状で、1~5週間の潜伏期間を経て、尿道分泌物、排尿痛、尿道のかゆみ、不快感など。女性の場合はさらに、腟のかゆみ、おりものの異常などが起こることもあるが、無症状であることも多い。
治療方法:抗菌薬を服用する。
赤痢アメーバ症
定点報告
※感染症法により、地方自治体が定める国内約1000カ所の医療機関には、感染例を保健所に報告することが義務づけられている。
全数報告
※感染症法により、全感染例を保健所に報告することが医師に義務づけられている。
AIDS
Acquired Immunodeficiency Syndrome