2019年10月に発表され、同年12月10日に授賞式が行われた、6部門のノーベル賞。
医学生理学賞は、米ハーバード大のウィリアム・ケーリン教授、英オックスフォード大のピーター・ラトクリフ教授、米ジョンズ・ホプキンス大のグレッグ・セメンザ教授の3人に贈られた。空気の薄い高地などの環境に動物が適応する「低酸素応答」の仕組みを解明し、がんや貧血などの治療法の開発に道を開いたことが評価された。
物理学賞は、米プリンストン大のジェームズ・ピーブルス名誉教授、スイス・ジュネーブ大のミシェル・マイヨール名誉教授、ディディエ・ケロー教授の3人に贈られた。宇宙の進化や地球の位置の理解に貢献したと評価された。ピープルスは、「ビッグバン」から宇宙が生まれる過程を研究し、「ダークマター(暗黒物質)」などと呼ばれる未知の物質の存在など、今日の宇宙論の基礎を築いた一人。マイヨールとケローは、1995年に、太陽とは別の恒星の周りを回る「太陽系外惑星」を初めて発見した。現在では、4000を超える太陽系外惑星が発見されている。
化学賞は、スマートフォンや電気自動車などに使われるリチウムイオン電池を開発した旭化成の吉野彰・名誉フェロー、米テキサス大オースティン校のジョン・グッドイナフ教授、米ニューヨーク州立大ビンガムトン校のスタンリー・ウィッティンガム教授の3人に贈られた。化石燃料に頼らない社会の実現に向けて貢献したことが評価された。グッドイナフは97歳で、ノーベル賞史上、最高齢の受賞者。
文学賞は、昨年、賞を選考するスウェーデン・アカデミー会員の関係者の性的暴行疑惑(後に有罪が確定)や受賞者情報漏えい疑惑に端を発する混乱のために見送られた。そのため今回、18年の受賞者と19年の受賞者が併せて発表される事態に。18年の受賞者にはポーランドの作家オルガ・トカルチュク、19年の受賞者にはオーストリアのペーター・ハントケが選ばれた。トカルチュクには『逃亡派』『昼の家、夜の家』などの作品がある。ハントケは小説だけでなく戯曲や詩など、幅広い創作活動を行っている。1987年の映画『ベルリン天使の詩』では、ヴィム・ヴェンダース監督と共に脚本を手がけた。
平和賞は、エチオピアのアビー・アハメド・アリ首相に贈られた。98年から戦争状態にあった隣国エリトリアとの和平協定を実現したほか、東・北東アフリカ地域の緊張緩和に尽力したことが評価された。
経済学賞は米マサチューセッツ工科大学のエスター・デュフロ教授、同じくアビジット・バナジー教授、米ハーバード大学のマイケル・クレマー教授の3人に贈られた。実証的な研究を通じて、貧困改善の効果的な手法を明らかにしたことが評価された。46歳のデュフロは同賞受賞者では最年少で、女性では2人目。