企業が自己のものとしてため込んでいる資金のこと。一般には、企業の税引き後の年間純利益から配当を支払った残額(利益剰余金)を指すことが多い。その累積額は、企業の貸借対照表の貸方・純資産の中にある「利益剰余金」の欄に見ることができる。
近年、特に安倍内閣の「日本を世界で一番企業が活動しやすい国にしたい」という政策の下、企業の利益は著しく増えている。これに応じて、企業は株主への配当金を増やしているが、その支払い後に残る利益剰余金の額も、安倍内閣が発足した2012年度の9.9兆円から18年度の35.8兆円へと増えている。その残高は、12年度末に304兆円であったものが、18年度末には463兆円へと膨らんでいる(下図)。
企業がそのように内部留保をため込むようになったのは、新自由主義路線の下で激化する競争を勝ち抜くためには体力が必要であり、内部留保はその重要な指標だからと言えるだろう。また内部留保の増大は、経営者にとって相対的に自由に使える資金が増えることを意味する。株主にとっても、それによって株価が上がる。
ため込まれた内部留保は何に使われているのだろうか。現預金として保有される、借入金の返済に充てられる、設備投資に使われる、他企業の買収資金として使われるなどと説明することはできるが、貸借対照表の貸方・借方それぞれの大項目の数字から、全法人企業についてそれを把握することは難しい。
ただし、推測はできる。法人企業統計で、17年度の貸借対照表を12年度のそれと比較してみよう。貸方の負債・純資産を見ると、利益剰余金(内部留保)が304兆円から446兆円へと142兆円も増加している。他方、借方で大きく増加しているのは投資有価証券である。236兆円から343兆円へ、107兆円の増加だ。
ここから、内部留保の増加分は、もっぱら有価証券への投資に(他企業の買収、とりわけ海外企業の買収に)充てられているのではないか、また投機目的での株式投資、証券投資に遊休資金の活用として向けられているのではないか、という推測が成り立つ。
内部留保の膨張に対しては、それを企業買収資金として国外で使わせるのではなく、課税して国内で有効に活用してはどうか、という主張がある。しかし、これには二重課税という問題がある。二重課税だからいけないとは言わないが、入り口段階で、すなわち、多額の収益を上げた企業にそれなりの税を課すことで、内部留保の増加に歯止めをかける方が先であるし、現実的でもあるだろう。
加えて指摘しておけば、労働組合こそが内部留保の活用を迫れる立場にある。そもそも企業の収益は労働者の働きがあってのものである。にもかかわらず、昨今は、その成果がもっぱら企業に帰し、労働者には十分には分かち与えられていない。企業の支払人件費は、18年度は209兆円。12年度の197兆円に比して6%増にとどまっている。企業の経常利益が12年度の48.5兆円から18年度の83.9兆円へと1・7倍に、内部留保の額が12年度の9.9兆円から18年度の35.8兆円へと3.6倍に膨らんでいるのと比べ、いかにも少ない。労働組合こそ、「内部留保を取り崩してでも賃上げを」と主張する権利を持っているのである。