日本に侵攻する艦艇や上陸部隊に対して、その脅威圏(射程圏)の外から対処する能力のこと。2022年12月16日に改定された「安保3文書」――外交・防衛の基本方針を定める国家安全保障戦略、それを踏まえて防衛力の水準を定める国家防衛戦略、5年間で整備する装備や防衛費などを定める防衛力整備計画においてその整備が定められた。
国家防衛戦略は、「我が国の防衛上必要な7つの機能・能力」として、スタンド・オフ防衛能力、統合防空ミサイル防衛能力、無人アセット防衛能力、領域横断作戦能力、指揮統制・情報関連機能、機動展開能力・国民保護、持続性・強靱性を挙げている。
防衛力整備計画では、スタンド・オフ防衛能力を強化するために必要な兵器として、射程をこれまでの100数十キロから1000キロ以上へと延ばした地上型発射ミサイル「12 式地対艦誘導弾能力向上型」などを開発し、その生産体制が確立するまでは外国製ミサイルを入手すると記述している。2024年1月には、防衛省はアメリカ製巡航ミサイル「トマホーク」の購入契約を同国政府との間で締結。最大400発が25年から27年にかけて納入されることとなった。
併せて、ミサイルを発射するプラットフォーム(発射母体)の多様化を進め、地上の車両などからの発射に加え、艦艇や航空機、さらには潜水艦に搭載可能な「垂直ミサイル発射システム」(VLS)も開発することとなっている。
ただ、国家安全保障戦略はスタンド・オフ防衛能力について、「相手の領域において、我が国が有効な反撃を加えることを可能とする」「反撃能力」、つまり「敵基地攻撃能力」として活用することも明記しており、これについて「憲法上、保有可能だが、政策判断として保有しない」とした鳩山一郎首相による「鳩山見解」(1956年)以来の政府の立場との整合性が問われる。
国家安全保障戦略は、「憲法及び国際法の範囲内で、専守防衛の考え方を変更するものではなく、武力の行使の3要件(注:2014年に閣議決定された武力行使新3要件)を満たして初めて行使され、武力攻撃が発生していない段階で自ら先に攻撃する先制攻撃は許されない」と説明しているが、そもそも敵基地攻撃能力の保有自体が専守防衛からの逸脱であり、憲法9条を死文化するものだとする批判もある。