imidas - 情報・知識&オピニオン

連載

【和の心 暦と行事】鰯雲

長月(9月)

知っていますか? 日本の四季と暮らしが生んだ、暦やしきたりを紹介。

「どの辺からが天であるか」と書いた詩人がいたが、秋はことさら天の高さを感じさせてくれる季節。なかでも、高い空に浮かぶその形で、ああ今年も秋になったのだなあという思いをつのらせてくれるのが、鰯雲いわしぐもである。

 ただし、「鰯雲」は俗称、通称であって、空一面に斑点のように、あるいは列のようになって広がるその雲は、正しくは巻積雲けんせきうん、あるいは高積雲こうせきうんという。巻積雲は、古い書物などでは同じ読みで「絹積雲」などという美しい表記に出合うこともある。

 雲の呼称には10種類があって、これを「10種雲級」という。高層から低層へ順に、巻雲、巻積雲、巻層雲、高積雲、高層雲、乱層雲、層積雲、層雲、積雲、そして積乱雲、つまりおなじみの入道雲になる。ちなみに中緯度の地域では、もっとも高層の巻雲は5000mから1万3000mの高層に現れる。したがって、巻積雲はそれに次ぐ高さに現れる雲ということになる。

 さて、秋の高空に浮かぶ巻積雲、通称、鰯雲だが、その白い小さな雲がびっしりと並ぶ形態から、「鱗雲うろこぐも」あるいは「鯖雲さばぐも」とも呼ばれる。いずれにしても、秋分点を境にして太陽のエネルギッシュな活動は南半球へ移り、雲も夏の水平線に浮かぶ積乱雲からぐっと高層の鰯雲に変わり、見慣れた「日本の秋空」となっていく。

 そして、その高い秋空に広がる鰯の大群や、鯖の大群のように見える雲。きっとそれは、漁師たちにとっては、大漁の吉兆に見えたことだろう。

 ところで、この巻積雲が浮かぶ空のことを、英語ではマックレル・スカイ(mackerel sky)という。マックレルとは「さば」のこと。なるほど、思いは同じだったのか。

2008/09/19

◆その他の暦と行事はこちら!【和の心 暦と行事】

著者情報

谷村鯛夢

たにむら たいむ

1949年生まれ。同志社大学文学部卒。「婦人画報」「25ansウエディング」「トランタン」などの女性誌の編集者、編集長、テレビコメンテーターを経て、現在、出版プロデューサー、コラムニスト。俳句集団「粗々会」同人、俳句誌「炎環」「馬酔木」会員。

関連記事

新着記事

imidasの最新記事はこちら!