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「ロスジェネ」と名付けられて20年 ~アラフィフになった氷河期世代

雨宮処凛(作家、活動家)

 2026年もあと2カ月を切った。

 年が明けたら、1月後半に私は52歳になる。

 そんな2027年は、朝日新聞が氷河期世代を「ロスジェネ」と名付けて20年という節目の年である。

 当時25~35歳という定義だったロスジェネは、来年には45~55歳。

 07年、32歳だった私も52歳になるわけである。

 ちなみに氷河期世代は厳密に45~55歳というわけではなく、おおむね1993~2004年に就職活動をした層で、1970年代前半から80年代前半生まれというのが定説だ。数にして1700万人とも言われ、2019年にはそのうち400万人が非正規やフリーター、無職と報じられた。

 現在、45~54歳の非正規雇用率は28.1%(総務省統計局「労働力調査〈基本集計〉2026年9月分及び7〜9月期平均」)。

 不安定雇用に晒された結果、上の世代より未婚率も高い。25年の国勢調査によると、45~49歳の未婚率は男性が30.6%、女性が20.4%。50~54歳の未婚率は男性が29.1%、女性が18.7%。いずれも5年前の調査と比較して2ポイント近くアップして過去最高となっている(総務省統計局「令和7年国勢調査 人口等基本集計結果」)。

 現時点で250万人が未婚で親と同居。老後への備えも薄く、国民年金の未納率は5割以上。将来もらえる年金額が月10万円以下という人が約4割。

 2035年、そんなロスジェネは60代に突入する。

 あと10年足らずで、戦後初めて「頼れる子も配偶者もいない高齢者」が大量に出現するのである。

「ロスジェネ」と名付けられて20年という来年は、この問題を訴える「最後のチャンス」かもしれないと思っている。

 なぜなら、この機会を逃せば次に注目されるのはロスジェネが65歳を迎える時と予想されるからだ。

 その時、露骨に「社会保障のお荷物」扱いされ、尊厳死法案などの成立によって「死」に誘導されるのでは――。そんな危機感が私にはリアルにある。

 そうならないために現在、来年「ロスジェネ」「氷河期世代」を盛り上げるべくいろいろ準備をしているのだが(まずは本を書いている)、10月16日、つけっぱなしのテレビから「氷河期世代」という言葉が流れてきて釘付けになった。

 そこに映し出されていたのは国会中継。簗和生前農林水産大臣の「予算カット」問題で持ちきりの頃だが、女性議員が氷河期世代について質問していたので思わず身を乗り出した。

 質問していたのは、立憲民主党の吉川沙織議員。9月末に公開された25年の国勢調査をもとに総務大臣や厚労大臣に質問していたのだが、聞いているうちに背筋が寒くなっていった。私が思っていた「未来予想図」より、数段恐ろしい将来像がちらついてきたからだ。

 まず吉川議員が質問したのは、最新の単身世帯について。これは私も9月に発表された国勢調査を見て驚いたのだが、25年、この国の単身世帯は41.4%に達した。

 なぜ驚いたかというと、40%を超えるのはもっと先だと推測されていたからだ。それなのに、予想を上回るスピードで進んでいる単身化。

 ちなみに今の日本でもっとも多いのは単身世帯。1985年には20.8%だったから、40年で2倍になった計算だ。

 一方で、「夫婦と子からなる世帯」は減少。90年には37.3%だったのに、25年は23.3%。今後、さらに減っていくことが予想される。

 このことが意味するのは、この国の社会保障制度が制度疲労を起こしているということだ。

 なぜなら、日本の各種制度は「夫婦と子からなる世帯」=「正社員の夫(終身雇用で年功序列)、専業主婦の妻、子ども2人」みたいな家族を「標準世帯」として設計されているからである。しかも、半世紀以上前の経済成長の時代に。

 しかし、そんな世帯が減り続け、未婚率も上がり生き方も多様化する中、現実に見合わないものとなっていることが以前から指摘されてきた。

 その結果、起きているのは「ひと昔前の標準世帯」から漏れる層が割りを食うということだ。

 そもそも半世紀前の日本では、「結婚しない人」「一生非正規の人」など想定されていなかった。ゆえに非正規、単身といったロスジェネに多い属性を支える仕組みがなく、この層の貧困リスクが爆上がりする。現役世代のロスジェネが健康で働ける限り、使える社会保障制度はゼロと言っていいだろう。

 よってロスジェネ問題を機に、時代遅れの制度を根本から見直すような提案ができれば――。私は今、そんな野望を持っている。

 具体的には正社員以外の生き方をしても、家族がいなくても貧困リスクに晒されず、安心して生き、老いることができる制度設計。それだけでなく、不安定雇用であっても望む人が家族を持ち、子育てできるような社会設計だ。それは若者の35%が「結婚するつもりはない」と回答(こども家庭庁「若者世代に関する総合的な調査〈若者10万人の総合調査〉令和8年度」)する現在、ロスジェネ以外の世代にもいいことづくめだろう。

『アンダークラス2030 置き去りにされる「氷河期世代」』(毎日新聞出版、2020年)著者の橋本健二氏も、〈氷河期世代の反主流派であるアンダークラスが生活しやすい社会は、おそらくすべての人々が生活しやすい社会であるに違いない。それはジョン・ロールズの「公正としての正義」にかなう社会であろうからである〉と書いている。

 ちなみに「氷河期世代の反主流派」とあるのは、この世代の非正規雇用率が29.2%であることからもわかるように、不安定雇用は少数派であるからだ。

「30年前の就職氷河期を今も引きずる層」がいる一方で、安定雇用を手に入れた「勝ち組」ロスジェネの中には40代50代の現在、働き盛りを迎えている者もいる。

 それだけではない。結婚して子どもを育てて家を買い、家族を養う層もいる。

 最近では、「子どもがやっと大学を卒業した」なんて話も耳にするようになってきた。

「これで卒親だ」と喜ぶロスジェネがいる一方、大学を出てから50歳までずーっと非正規というロスジェネもいる。世代内格差どころか、同窓会がパラレルワールドの様相を呈するのがこの世代の特徴なのだ。

 吉川議員の質問に戻ろう。

 続けて彼女は単身氷河期世代の未来について質問したのだが、2040年、氷河期世代の単身世帯は60~64歳で37.4%、65~69歳で40.1%になる予想だという。

 ちなみに2040年、私は65歳。まずはこの事実が恐ろしい。そして今も一人暮らしだが、50代以降で誰かと住むとか考えられないのでこのまま単身世帯の高齢者に突入するだろう。
 が、その時に問題となるのが住まい。

 ここで吉川議員はまた恐ろしい質問をした。それは「氷河期世代の持ち家率」について。

「もう聞きたくない!」と耳を塞ぎたい思いだったが、吉川議員の質問に答え、藤井総務大臣がその結果を読み上げる。

 1993年と2023年の持ち家率を比較していくのだが、39歳以下の持ち家率は、93年は28.9%だったのに対して、23年は23.0%と5.9ポイント低下。

 40~49歳は93年は67.4%だったのに対して、23年は58.0%と9.4ポイント低下。

 50~59歳は93年は75.6%だったのに対して、23年は65.5%と10.1ポイント低下。

 氷河期世代と重なる今の40~50代で、持ち家率は大きく低下しているのである。

 先に45~54歳の非正規雇用率は29.2%と書いた。ここには世帯主も相当数含まれるわけだが、そんな人々はどうやってローンを組んで持ち家が買えるというのか。現在、賃貸物件だって非正規という理由で落ちる時代だ。しかも単身者は親に賃貸物件の保証人を頼むことが多く、私もそうしていたが、親が65歳を迎えた途端、審査が通りにくくなった経験がある。業者によっては「65歳以上」を保証人として認めないからだ。

 よってフリーランスの私は40代から賃貸物件を借りるのが難しくなり、場合によっては年間10万円近くの費用負担が発生する家賃保証会社と契約を結ばなければいけないこともある。正社員じゃない、結婚していないということの罰を受けているような気持ちだが、そんな社会的信用ゼロのフリーランスが、どうしてローンなど組めるだろう?

 それではずっと家賃を払うのかとなると、この世代、今はまだ現役で働いているからいいものの、私などはあと9年で還暦である。その時に果たして仕事はあるのだろうかと考えると目の前が暗くなってくる。

著者情報

作家、活動家

雨宮処凛

あまみや かりん

1975年、北海道生まれ。反貧困ネットワーク世話人。バンギャ、フリーター、右翼活動家などを経て2000年、自伝的エッセイ『生き地獄天国』(太田出版/ちくま文庫)でデビュー。2006年からは貧困問題に取り組み、『生きさせろ! 難民化する若者たち』(2007年、太田出版/ちくま文庫)は日本ジャーナリスト会議のJCJ賞を受賞。著書に『学校では教えてくれない生活保護』(‎河出書房新社、2023年)、『死なないノウハウ 独り身の「金欠」から「散骨」まで』(光文社新書、2024年)など多数。

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