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社会問題

若年性認知症に備えよ

相談件数が年々増加中

小長谷陽子(認知症介護研究・研修大府センター研究部長)

 認知症予防については、さまざまな研究や試みがされていますが、残念ながらこれをしたら絶対に認知症にならない、という方法はありません。認知症は、糖尿病や高血圧症、高脂血症などいわゆる生活習慣病との関わりが深いとされているので、生活習慣病にかからないこと、かかってしまった場合はしっかりと治療して悪化させないようにすることが重要です。日常生活では、適度の運動やバランスのよい食事、知的行動(読書、ボードゲーム、文章を書くなど)、人との関わりがあることなどは認知症になるリスクを下げるとされています。
 そして、早期発見・早期治療も重要です。現在、病院で処方される抗認知症薬は対症療法ですが、初期段階で服用を開始するほうが、より効果があるとされています。まだ、根本治療法が確立されていないので、早い時期から治療を始めれば、よい状態を長く保つことが可能になるというわけです。
 65歳未満で発症する若年性認知症に関しては、医療・介護分野のみならず、一般の方からも少しずつ認識されてきつつあります。しかし、実際に診断された本人や家族にとっては初めての経験であり、戸惑いや将来に対する大きな不安があります。
 若年性認知症の人は、適切な環境で生活することで安定した状態を維持でき、家族の不安や負担も軽減されます。そのためには、医療機関、介護保険制度だけでなく、雇用、障害者福祉などのさまざまな既存の制度の活用とそれらの間の密な連携が必要です。特に診断直後の支援は重要であり、必要な情報の提供と適切な助言、本人や家族の不安の軽減、今後の生活の方向性を示し、それにより、本人と家族の生活を再構築することが大切です。

もしも支援が必要になったら

 国の新しい「認知症施策推進総合戦略(新オレンジプラン)」に基づく若年性認知症施策の柱として、若年性認知症の人の自立支援に関わる関係者のネットワークの調整役「若年性認知症支援コーディネーター」の配置が各都道府県において16年度から始まりました。
 支援コーディネーターは、若年性認知症の人のニーズに合った関係機関やサービスの担当者との「調整役」になる人です。配置される相談窓口は、本人や家族の支援をワンストップで行い、必要に応じて職場や産業医、地域の当事者団体や福祉サービスの事業所と連携し、就労の継続や居場所づくりの支援を行うなど、それぞれの役割分担を協議しつつ、本人が自分らしい暮らしを続けられるよう、本人の生活に応じた総合的なコーディネートを行います。
 本人や家族にとっては、各県に1カ所だけでは利用しにくい面もあり、もっと気軽に相談できるよう、身近な市町村にも同様の機能があるとよいでしょう。また、この制度が定着し、継続していくためには、コーディネーターが十分にその能力を発揮できるような仕組みづくりも重要です。
 病気の発症初期の段階から、本人や家族がその状態に応じた適切なサービスを利用できるよう『若年性認知症ハンドブック』も作成されています。内容は診断直後の相談窓口、雇用継続のための制度、退職に関連する制度やサービス、若年性認知症の医学的理解、本人・家族の心理状態、日常生活における工夫、医療機関の選び方、車の運転、介護保険制度、成年後見制度、相談窓口、サービス等の申請先など総合的です。具体的でわかりやすい記述になっていて、医療機関や自治体窓口など若年性認知症の人や家族が訪れやすい場所で配布されています。
 さらにハンドブックに盛り込んだ内容を詳細に解説した、相談担当職員向けの『若年性認知症支援ガイドブック』があります。これらの冊子をはじめ、若年性認知症への理解を深め、本人や家族、支援者のために作成したパンフレットは以下から閲覧、ダウンロードが可能です。

若年性認知症コールセンターホームページ
http://y-ninchisyotel.net/(外部サイトに接続します)

著者情報

認知症介護研究・研修大府センター研究部長

小長谷陽子

こながや ようこ

1975年、名古屋大学医学部卒業。メリーランド大学(アメリカ合衆国)医学部神経内科客員研究員、JR東海総合病院(現名古屋セントラル病院)神経内科主任医長、同副院長を経て2004年より現職。医学博士。日本内科学会認定医、日本神経学会専門医・指導医、日本認知症学会専門医・指導医、日本認知症ケア学会評議員。日本医師会認定産業医。著書に「本人・家族のための若年性認知症サポートブック」(中央法規出版)など。

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