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カタログの読み方、教えます

激戦!薄型テレビ編

鴻池賢三(DAC JAPAN代表/THX認定ホームシアターデザイナー)

 液晶テレビにプラズマテレビ…。大量のカタログを前に、ずらっと並んだ理解不能のスペック表記…。たとえば、コントラスト比を見比べて、「400:1」よりも「40000:1」の方が100倍優れているように感じませんか? では、大切なお買い物の前に、カタログの読み方のちょっとしたコツを伝授いたしましょう。

トリックの一番手、“色域”

 色域「○○○比114%」など、数値が大きいほど、映像が色鮮やかに見えそうに思ってしまいませんか? まず、表示装置であるテレビが、ソースとなる放送の規格を上回っていても、その恩恵は受けられません。「高画質=元の映像に忠実」とするならば、映像をテレビ側で誇張し、色鮮やかに見せても、それは「作り物」でしかないのです。
 次に「NTSC比○○○%」などの表現。そもそも、アナログ放送用規格であるNTSCと、デジタル放送用のHDTV(高精細テレビ)規格ITU-R BT709では、カバーする色域が多少異なります。デジタル放送の視聴には、「HDTV規格比100%」で必要十分なのです。

まどわされがち? コントラストの3大トリック!

1.「コントラスト比」といわれれば、科学的っぽいが…
 コントラスト比とは、最大輝度(白)と最小輝度(黒)の明るさの対比です。最大輝度が同じ500cd/m2のプラズマテレビと液晶テレビがあるとしましょう。プラズマテレビは画素自らが光る(光らなければ黒となる)ため、最小輝度を得意としますが、液晶テレビは常時点灯のバックライトを画素でさえぎる仕組みで、光の漏れがあるため、最小輝度を苦手とします。最小輝度が0.05cd/m2のプラズマテレビでは、コントラスト比は500÷0.05となり、10000:1と計算できます。一方、最小輝度が0.5cd/m2の液晶テレビでは、500÷0.5となり、1000:1。つまり、最小輝度がわずか0.45cd/m2小さいだけで、コントラスト比が10倍に見えてしまうのです。
2.「暗室コントラスト」と「明室コントラスト」
 暗室コントラストとは、真っ暗な部屋を想定したコントラスト比の値です。この場合、先述の「最小輝度の小ささ」が数値を左右するため、プラズマテレビが有利となります。一方、明室コントラストは、リビングの明るさを想定したコントラスト比の値です。この場合、明るさを示す最大輝度が数値を左右するため、実際のコントラスト感は、絶対的に明るい液晶が有利になります。
 カタログでは、多くのメーカーが、「暗室コントラスト」または「明室コントラスト」のいずれかを表記することなく、有利な条件で数値を表示しています。
3.プラズマテレビのコントラスト比が高いわけ
 プラズマテレビにおける最大輝度は、画面の一部分だけを光らせた「ピーク輝度」を指し、1000cd/m2を超える場合もあります。得意な最小輝度が0.05 cd/m2なら、計算上では20000:1もの値となるのです。ところが、実際のところ、画面全体が明るいシーンでは、オーバーヒートを避けるため、最大輝度を下げる操作をします。加えて、明るい部屋では、最小輝度の低さも、照明によってかき消されます。コントラスト比が優秀に見えるプラズマテレビですが、店頭のように明るい場所で、バラエティー番組のような明るい映像を見ると暗く不鮮明に見えるのは、このような理由によります。

コントラスト比が最重要ポイント。ゆえに、トラップもいっぱい

 コントラスト比の数値自体が何を指しているのかについても、注意が必要です。たとえば、パネル自体がもつ本来の性能と、それをテレビとして用いた場合のコントラスト比には差があります。特に、大手メーカー以外の製品では、パネル単体のスペックを表記していることが多いのが実情です。また、液晶テレビは、斜めから見るとコントラスト比が低下します。記載されているのは、真正面から見た場合の数値なのです。映画フィルムのコントラスト比は、1000:1~1500:1程度といわれています。斜めから見ても、この程度の数値を確保しようとするなら、スペック上の数値は数万:1以上が必要となるでしょう。

目立たないスペックだが、ここは絶対におさえたい

 液晶テレビの場合、「バックライトコントロール」機能がないと、暗い部屋での黒浮き(黒が黒に見えない)を低減できません。手動調整や、部屋の明るさに応じた自動調整機能が必須といえます。安価な製品では搭載されていないケースが多いので、注意が必要です。

プラズマテレビと液晶テレビ、どっちが良い?

 プラズマテレビと液晶テレビをコントラスト比で比較するのは、無意味といえます。部屋の明るさや、主に見る映像の種類から適切なタイプを選びましょう。暗室で、映画などの比較的暗い映像を見るのが主ならば、最小輝度が低く、暗室コントラスト性能の優れたプラズマテレビが有利です。明室で、バラエティー番組など比較的明るい映像を見るのが主ならば、絶対的に明るい液晶テレビのほうがメリハリのある鮮明な映像が得られます。

新製品ラッシュ! 今は“買い時”か?

 液晶テレビは、かつては苦手だった早い動きへの対応も改善され、実用上問題ないレベルに達していますが、暗室での黒浮きはまだ気になるところです。黒浮きに対しては、バックライトを分割してコントロールする技術が確立し、飛躍的に改善された製品が登場する予定です。もう半年~1年程度待つと、より良い買い物ができるでしょう。
 プラズマテレビは、暗室という条件が前提となるものの、画質面では完成の域に達したと考えて良いでしょう。ただし、一般的な家庭で日常的に使用するには、まだ明るさが不足し、明るい部屋でコントラスト比が確保できないほか、パネル表面の映り込みも気になります。価格を含めて一般家庭向きの商品に至るには、まだ開発途上といえるでしょう。
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著者情報

DAC JAPAN代表/THX認定ホームシアターデザイナー

鴻池賢三

こうのいけ けんぞう

1969年生まれ。大手AV機器メーカ一、米シリコンバレーの半導体ベンチャー企業を経て独立。商品企画・技術コンサルティング業を軸に、情報サイト『All About』をはじめ、新聞、雑誌、テレビなどでアドバイザーとして、また『ビジュアルグランプリ』(音元出版主催)の審査員、日本オーディオ協会「デジタルホームシアター普及委員会」委員を務めるなど幅広く活躍中。日本で唯一のISF認定映像調整技術者でもある。

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