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社会問題

コロナウイルス感染拡大で明らかになった、 外国人労働者の労働実態とその存在

日本の産業は、技能実習生、留学生に支えられている?!

鳥井一平(「特定非営利活動法人 移住者と連帯する全国ネットワーク」【移住連】代表理事)

(構成・文/稲垣 收)

 日本には約33万人も留学生がいます(2018年法務省入管調べ)。そして留学生の労働問題も深刻です。
 留学生なのに「労働問題」というのも変ですが、実は日本に来ている留学生の多くには、「留学生ブローカー」が介在していて、(私の試算によると)留学生の8割以上が働いているのです。これは欧米諸国では見られない、異常に高い比率です。
 留学ビザでも、申請すれば週28時間以内のアルバイトならば働くことが許可されていて、日本社会も留学生の「労働力」に頼ってきたのです。留学生たちが居酒屋やレストランなどの外食産業、宿泊業、コンビニなどの小売業等の産業を支えてきました。日本にこれほど多くの留学生がいるのは、それが理由です。
 しかし彼ら彼女らの多くがコロナ禍で職を失い、生活に困窮しています。また、留学生の労働はアルバイト扱いなので、国民健康保険にしか加入しておらず、またそれは社会保険(被用者保険)ではないため、新型コロナウイルス感染症に罹患した場合、そのままでは休業補償が受けられません。
 これに対して条例化で救済している自治体もありますが、そもそもは政府が留学生の労働力を期待した受入れ政策をとってきたのですから、国が補償すべきなのです。
 ようやく雇用調整助成金の対象に雇用保険未加入者も含むこととはなってきましたが、これもまた、手続きの難しさもあって、外国人労働者への補償には届いていません。

雇用調整助成金の申請を面倒がる企業

 配偶者ビザで滞在しているインドネシア人男性は、有名チョコレート会社のパティシエをしています。緊急事態宣言が出た際に、彼は「出勤できません」と会社に言ったのですが、これに対し会社は「だったら有休を使って休んでください」と答えました。
 その後、会社は休業。緊急事態宣言の解除以前の5月6日から営業再開を会社は決定します。彼は「緊急事態宣言が続いているので感染するのが心配だから、やっぱり出勤できません」と伝え、「会社に迷惑をかけても申し訳ないから」ということで、退職する意思を示したのです。
 すると会社から「給料が過払いだったから返せ」という連絡が来ました。会社は5月いっぱいまでの給料を払っていて、その中で「有休で処理できないものもあったから返せ」と言うのです。
 そこで私たちが、「そもそも、なぜ欠勤扱いになるのか」と会社に問い合わせると、回答書が来ましたが、私はこれを見て驚きました。「当社としては将来、会社に継続して働いて協力してくれる人に対して補償いたします」と書いてあったのです。
 厚生労働省は、新型コロナに対する特例措置として、「雇用調整助成金」というのを出しています。「①売上げが下がり、従業員を休業させる必要があった ②従業員を計画的に休業させた ③休業させた従業員に休業手当を支払った」などの場合に、企業に対して支払われるものです。
 ですから、このパティシエの場合も、会社が欠勤扱いにせず、休業手当を払って、厚労省に雇用調整金を申請すればいいわけです。外国人労働者が働いている企業の多くが中小や零細企業で、この雇用調整金の申請手続きを面倒だと感じて、手続きをしないところが多いのです。

コロナ禍は日本の移民政策を正面から考える機会

 建設、外食、ホテル産業などの業界でも、雇い止めや解雇が多く見られます。
東京のホテルなどでは、ベッドメーキングやルームクリーニングをしているフィリピン人労働者が、コロナ禍以降、出勤日数も労働時間も激減して困っています。以前は月に160~170時間働いていたのが、20~30時間くらいに減ってしまって、月収が約3万円前後になってしまいました。
 このホテルの総務部長は「雇用調整金の申請は面倒くさいから、やりたくありません」と言ってきました。しかし私は「ぜひ申請した方がいいですよ。雇用調整助成金をもらって、外国人労働者だけでなく社員全員に払えば、全員のモチベーションが上がりますよ」と説得しています。

◆◆◆

 このようにコロナ禍は、外国人労働者たちにも大きな影響を与えています。
ただ、その一方で、前述したように技能実習生が日本に来られなくなったために野菜が高騰するなど、外国人労働者がどれほど日本の産業を支えているのかということを、つまり、「メイドインジャパン」や「地産地消」を誰が支えているのかを多くの人に知らしめることにもなりました。
 もはや彼ら彼女らの労働力なしでは、持続可能性がない社会であることは歴然としています。今回、新型コロナウイルスによって、日本社会の様々な産業のこれからの「担い手づくり」をあらためて考える機会、つまり、移民政策を正面から考える機会が訪れた、と言えるでしょう。
 日本に大勢の外国人労働者がいることに不安を感じたりする人もいるかもしれません。ただ一方で、日本から海外に出て長期滞在したり永住資格を持って暮らしている人も、140万人もいるのです(外務省「海外在留邦人数調査統計」2018年)。そうした海外在留邦人の人権や、労働者としての権利が守られてほしいと、ほとんどの日本人は望むのではないでしょうか。それと同様に、日本にいる外国ルーツの人たちの人権や、労働者としての権利も、守られねばならないはず。外国人労働者も、日本人と同じ公的救済を受けられるようにすべきです。
 そして、移民、外国人労働者を「よそ者」とみなして排除したり、単なる「期間限定の使い捨て労働力」扱いしたり、「一時的に日本に来ているだけのお客さん」などと捉えるのではなく、「共に、この社会を築いていく仲間だ」と捉えていくことが大切だと、私は考えます。

*移住連は、政府へ要請を行うとともに、今後の支援体制を準備しています。関心がある方は、以下の要請と緊急アピールを、参照してみてください。
・新型コロナウイルス感染拡大防止に向けた緊急共同要請

・新型コロナウイルス流行にともなう緊急アピール

 

著者情報

「特定非営利活動法人 移住者と連帯する全国ネットワーク」【移住連】代表理事

鳥井一平

とりい いっぺい

1953年大阪府生まれ。「特定非営利活動法人 移住者と連帯する全国ネットワーク」(移住連)代表理事。全統一労働組合外国人労働者分会の結成を経て、93年の外国人春闘を組織するなど、外国人労働者を長年サポートし続け、2013年には米国務省が「人身売買と闘うヒーロー」に日本人として初選出、表彰された。19年9月にはNHK『プロフェッショナル 仕事の流儀』でも特集された。近著に『国家と移民 外国人労働者と日本の未来』(集英社新書)がある。

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