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三島由紀夫――いまだ衰えぬ人気の秘密

舞台や映画で新しいファン層を獲得、海外でも人気が

松本徹(三島由紀夫文学館館長、作家)

 三島作品に関して特筆すべきことは、オペラやバレエとしても上演されている点です。
 オペラでは、歌劇場ベルリン・ドイツ・オペラの委嘱で黛敏郎が作曲した『金閣寺』があります。『午後の曳航』を元にしてドイツ人作曲家のハンス・ヴェルナー・ヘンツェが手がけた『裏切られた海』、池辺晋一郎作曲『鹿鳴館』なども、話題となりました。バレエでは、小説ではなく三島由紀夫自身が題材になっています。フランス人の振付家モーリス・ベジャールが演出・振付をした『M』です。
 三島自身が短編映画『憂國』(1966年)を自作自演した際にも、世界を驚かせました。映画の出演作には『からっ風野郎』(大映、60年)、『黒蜥蜴』(大映、62 年)、『人斬り』(大映、69年)などがあります。
 さらに、自らがモデルとなった写真集『薔薇刑』(細江英公著)が63年に集英社から出た際も、世界中に強烈な印象を与えました。『薔薇刑』は、同じく集英社から三島の死の翌年71年に『薔薇刑 新輯版』として、さらに84年に『薔薇刑・新版』が出版されました。2015年11月には4度目の出版となる『二十一世紀版 薔薇刑』(発行 YMP)が未発表の写真を加えて刊行されました。それぞれ、時代を代表する杉浦康平、横尾忠則、粟津潔、浅葉克己が装幀を担当したという点でも意味のあるものとなっています。いまもこれらの写真集を求める人があとを絶たないようです。
 16年7月7日には、細江さん、浅葉さん、それに司会役の私が加わり、二十一世紀版のトークショーが、販売元の東京の丸善で開催されました。定員以上の人が集まり、入場できず帰った人も少なくありませんでした。

刺激的な魅力から逃れられない

 写真と言えばもう一人、篠山紀信の存在を忘れてはなりません。篠山が手がけた写真集に『三島由紀夫の家』(美術出版社、1995年)がありますが、澁澤龍彦責任編集の雑誌「血と薔薇」の創刊号(68年)に掲載された、三島がモデルの「聖セバスチャンの殉教」と題した、裸体に矢が3本刺さった写真は衝撃的なものでした。2009年には、これに関する未公開の写真などが競売会に出品され話題になりましたが、三島の企画による「男の死」の写真はいまだに大半が未公開です。これが全面的に公開されたらどのような騒ぎになるか、今から案じられます。
 また、今年1月、イギリスの翻訳家ジョン・べスター氏と三島が、自決した年の2月、つまり死の9カ月前に対談した録音テープがTBSで見つかったことが新聞やテレビで報じられました。対談した時期が時期ですし、1時間以上とかなり長いもので、大変興味深いですね。こんなふうに、年月が経過するとともに、いろいろな資料が出てくることで、さらに研究が進むのでしょう。
 4月9日まで東京の寺田倉庫G1ビルで開催中の「デビッド・ボウイ大回顧展」では、彼が描いた三島の肖像画が話題になっているとも聞きます。今回ご紹介したのはほんの一例で、海外も含め、小説や舞台のほかにも、美術やマンガなど、私など知らないところで、三島の作品やその存在、行動に強く刺激され、さまざまな創作活動や批評が行われているようです。多くの人々が、私と同様、三島由紀夫の魅力から逃れられないのです。
 我々は、三島由紀夫というとんでもなく刺激的な存在を持ってしまったのです。

著者情報

三島由紀夫文学館館長、作家

松本徹

まつもと とおる

1933年北海道生まれ。大阪市立大学文学部卒業。産経新聞社勤務後、近畿大学、武蔵野大学の教授を経て、現在に至る。主な著書に『三島由紀夫の生と死』(鼎書房、15年)、『天神への道 菅原道真』(試論社、14年)、『小栗往還記』(文藝春秋、07年)、『三島由紀夫 エロスの劇』(作品社、05年)、『三島由紀夫の最期』(文藝春秋、00年)ほか。『三島由紀夫研究』(鼎書房)最新号の第17号では、ボディビルによって肉体を改造、さまざまなスポーツにも挑戦した三島にとって、強靱な肉体を獲得したことが、後半生において大きな意味を持つようになったと思われることから「三島由紀夫とスポーツ」という特集を予定している。(2017.2)

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