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外国人技能実習生たちの過酷な実態を映画化。「彼女たちは、〈労働者〉としてしか見られない。人間としてそこにいるのに」

~映画『海辺の彼女たち』の監督・藤元明緒さんに聞く

藤元明緒(映画監督)

(構成・文/仲藤里美)

藤元 ベトナムに帰るとしたら、入管施設に収容されて、送還されることは避けられないでしょうね。それが早いか遅いか、自分から出頭するのか捕まるのかの違いだけです。もしかしたら、映画で描いた物語の数日後には、もう捕まってしまっているかもしれない。彼女たちは、それだけリスクの高い、綱渡りのような状況にいるわけです。そして強制送還されたとしても、彼女たちはその経験を決して家族には話さない。墓場まで持って行くんだろうと思います。
 彼女たちがどんなに苦労していても、「(不法滞在という)犯罪者だから同情できない」という感想もインターネット上では見かけました。たしかにビザを持たずに就労している以上、「犯罪者」というレッテルを貼られるのは仕方ないのかもしれない。でも、考えてみれば、最初の職場が彼女たちにきちんとした労働環境を提供していれば、そんなことにはならなかったんですよね。それを「犯罪者だからつらい状況に陥ってもしょうがない」と思考を止めてしまっていいのか。そのことは考えてほしいと思っています。

半径5メートルの「自分ごと」のテーマを描きたい

──あるインタビューで、藤元監督は「半径5メートルのことを誠実に映画にすること」が自分の持ち味だ、と話されていました。本作も、前作の『僕の帰る場所』(2017年)も、〈在日外国人〉の問題を扱った映画ですが、それも監督にとっては「半径5メートルのこと」だということでしょうか。

藤元 そうですね。僕が意識してたぐり寄せたわけではなく、自然と身近な存在になっていたという意味で「半径5メートル」だと思います。もしミャンマーに行っていなかったら、ミャンマー人の妻と出会っていなかったら、僕の撮る映画は全然違うものになっていたんじゃないでしょうか。
 ミャンマーに行ったのは「ミャンマーで映画を撮る人募集」というSNSでの公募に応募したのがきっかけなので、言葉が悪いかもしれないけれど最初は「なんか面白そうだし、行ってみよう」くらいのノリだったんです。でも、実際に現地に行っていろんな人と出会い、撮影したりしているうちに、ミャンマーが自分にとって大切な存在になっていった。それが映画づくりの面白さでもあると思っています。
 そういう思いも経験もなしに、ただ「このネタ、おいしいから映画にしよう」と思うだけだと、映画をつくっている途中でモチベーションが折れてしまうんですよ。映画づくりってけっこうつらいので(笑)、自分ごとになっているテーマじゃないとやり通せない。そういう意味で「半径5メートル」なんですよね。

──前作、本作のテーマから、「社会派監督」と言われることも多いと思います。ご自身ではどう感じられていますか。

藤元 僕は、そもそも映画というのは、絶対に社会的なことが入ってくるものだと思っているんです。仮にファンタジー映画だったとしても、どこかで現実世界とリンクしていないと、撮る意味も、鑑賞する意味もわからなくなってしまうと感じる。その意味で「社会派」と言われるなら、そうかもしれません。

──次の映画のテーマとして考えていることはありますか。

藤元 一つは、ミャンマーから見た戦争の話ですね。初めてミャンマーに行ったときに、第二次世界大戦中、日本兵に家族を殺されて山の中に逃げたという人に会ったんです。「日本人に会うのはそれ以来だ」と言われて、いろいろ話を聞かせてもらったんですけど、そのときの経験がけっこう強烈で。日本で生まれ育っていると、どうしても戦争の話って「日本人」を主語に考えてしまいがちじゃないですか。そうじゃない、「向こう側」の人の声も聞かなくちゃいけないな、と思いました。これはすでに『白骨街道』という短編映画にもしたんですけど、改めて長編映画として撮影したいな、と考えています。
 あと、日本に暮らす外国の人たちやそのコミュニティについても、引き続き取材はしていきたいと考えています。もし、それでまた映画をつくることができたら、今度はこれまでやってこなかった「日本人目線」での描き方をしたい。日本人の視点から、近くにいる外国人との関わり合いについて考えるような、そんな映画をつくりたいですね。

*映画『海辺の彼女たち』は、ポレポレ東中野ほか全国順次公開中。公式サイトはこちら。

著者情報

映画監督

藤元明緒

ふじもと あきお

1988年生まれ。大阪府出身。ビジュアルアーツ専門学校大阪で映画製作を学ぶ。日本に住むミャンマー人家族の物語を描いた映画『僕の帰る場所』(2017年)が長編初監督(脚本・編集も)作品。同作が、第30回東京国際映画祭「アジアの未来」部門などで受賞を重ね、33の国際映画祭で上映される。長編2作目『海辺の彼女たち』(2020年)も脚本・監督・編集を務め、第68回サンセバスチャン国際映画祭の新人監督部門に選出された。2021年、コロナ禍の中、『海辺の彼女たち』は一般公開され、好評を博している。

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