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連載

東京大学の学費値上げが正式決定へ 〜拙速なプロセスの裏側に何があったのか

第59回

大内裕和(武蔵大学教授)

 国際卓越研究大学の制度設計は、学内民主主義を軽視し、上意下達のトップダウン型の組織を志向しています。学生や教職員の声を十分に尊重しない、今回の東京大学の学費値上げのプロセスは、国際卓越研究大学の制度設計に沿ったものだと言えるでしょう。

 また、同報告書には次のような一文もありました。

〈大学全体のマネジメントに重要なツールであるデータ一元化などの取組についても更なる具体化が期待される〉

 この「データ一元化」は、学費値上げの使途としてトップに挙げられた「学修情報の可視化・全学の学修環境の整備」に当たるように見えます。つまるところ今回の学費値上げは、学生のための学修環境の整備というよりは、国際卓越研究大学の認定審査で受けた指摘に応えようとしたものではないでしょうか。 

 東京大学の学費値上げは、反対する学生や教員の声を十分に尊重しなかった点で、そのプロセスに大きな問題があったことは間違いありません。それに加えて値上げの根拠が不明瞭なまま、ここまで拙速に進めたことは大学当局が「学問の自由」や「大学の自治」よりも「国際卓越研究大学=稼げる大学」に向けて前のめりになっている姿を示しているようです。

 今回の問題は今後、全国の大学に影響を与えるでしょう。その影で日本を代表する高等教育機関である東京大学が「稼げる大学」へと暴走することは、「学問の自由」によって支えられている批判的言論の力を奪い、日本の市民社会の基盤を崩壊させる危険性も孕んでいます。なので声を上げた学生たちの行動は、学費値上げに反対するだけでなく、日本社会を揺るがす深刻な事態が起きていることに警鐘を鳴らしたという点で、より大きな意味があると私は思います。

 学費値上げに反対した学生たちの声に耳を傾け、どう受け止めていくべきか? このことが私たちに問われています。

著者情報

武蔵大学教授

大内裕和

おおうち ひろかず

1967年、神奈川県生まれ。東京大学大学院教育学研究科博士課程単位取得。松山大学教授、中京大学教授を経て2022年度より現職。「入試改革を考える会」代表。「奨学金問題対策全国会議」共同代表。著書に「ブラックバイトに騙されるな」(集英社)、「教育・権力・社会」(青土社)、「ブラック化する教育 2014-2018」(青土社)などがある。

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