imidas - 情報・知識&オピニオン

連載

男性の「更年期」? LOH症候群について知ろう~(後編)ホルモン補充療法やサプリの効果など気になる疑問をチェック

イミダス編集部

(構成・文/加藤裕子)

(前編「中高年男性が悩むさまざまな不調の原因は?」からのつづき)
 まだまだ知られていない男性の「更年期」。治療はどのように行うのか、サプリや健康食品の効果、生活習慣で気を付ける点など知っておきたいポイントを、泌尿器科医で聖隷浜松病院・生殖機能医学科部長の今井伸医師にうかがった。

今井伸医師(泌尿器科医、聖隷浜松病院・生殖機能医学科部長)

【後編の目次】
・P1
 ホルモン補充療法で「復活」できる?
・P2
 サプリメントは効果が期待できる?
「もう若くない自分」にどう向き合うか

ホルモン補充療法で「復活」できる?

 ――LOH(Late Onset Hypogonadism)症候群(加齢男性性腺機能低下症候群)の治療では、具体的にどのようなことをするのでしょうか。
 LOH症候群の治療の基本は、テストステロン補充療法です。保険診療の選択肢は注射のみで、1回にかかる費用は3割負担の場合、診察料も含めて1000円程度になります。海外には内服薬、貼り薬、ジェルなどもありますが、日本では認可されていないため、自由診療の扱いです。
 注射は、2〜3週あるいは3〜4週に1度打ちます。注射して4〜7日後にテストステロン値のピークとなり、その後、ゆっくり下がっていきます。3〜4週に1度の方が投与する量が多いのでピーク時の値が高く、補充したテストステロンが長く残りますが、いずれにせよ注射後2週間くらい経つと、「だいぶ減ってきた」という感覚になってきます。そのため、1カ月に1度の頻度でしか来られない患者さんには、残り10日ぐらいのタイミングで「グローミン」(大東製薬工業の登録商標)という、男性ホルモンクリーム剤を併用してもらうこともあります。1日1〜2回、陰のうやあごの下、腹部等に塗り込むだけなので気軽に使えると思います。
 僕の父が60歳を過ぎてLOH症候群の症状が出たときも、ひとまず「グローミン」で様子を見たところ、約1カ月でとても元気になりました。なお、「グローミン」は処方箋が不要な市販薬としても売られていて、値段は1本4000円くらい、ドラッグストア、薬局、ネットで購入できます。 治療にあたり、もっと頻繁にテストステロンを注射すればずっとピークを保てるのでは、と思うかもしれませんが、テストステロンは造血作用も強いので、投与量が増えると多血症のリスクが出てきます。多血症は、赤血球が増加して血液がドロドロになることで、頭痛、めまい、皮膚の痒み等を引き起こし、血栓ができやすくなることから脳梗塞や心筋梗塞などの原因にもなります。ですので、単純に「たくさん打てばいい」わけではなく、注射の頻度によっては、投与量を少なめに調整することもあります。
 
 ――テストステロン補充療法はすぐに効果が出るのでしょうか。また、一度始めたらずっと続けることになりますか。
 つらい症状をずっと我慢していたような人では、枯れかけていた草に水をやったように劇的によくなることもあります。しかし、効果の出方には個人差があり、多くの場合、薄皮が少しずつ剥がれていくように、穏やかに改善していきます。とりあえず3カ月〜半年続けたところで、「だいぶ楽になってきたな」「だんだんやる気が出てきた」という実感が得られるというイメージですね。
 症状が改善すれば、治療はやめてかまいません。できれば、注射を打つ間隔を延ばしてみて、それで問題がないようなら、一度ストップするという段階を踏むとよいでしょう。また調子が悪くなってきたら、いつでも再開できます。一方、テストステロンは男性にとっての「ガソリン」のようなものですから、「ガソリン補充」的に治療を続けることも可能ですし、年齢制限もありません。
 ひとつ注意していただきたいのは、現在、LOH症候群の治療に使うテストステロン製剤が品薄になっていることです。地域によっては、新規開業するクリニックだけではなく大学病院でも入手しにくくなっており、やむなく海外のテストステロン製剤を輸入して使う医療機関が増えてきています。品質や効果に問題があるわけではありませんが、やはり自由診療扱いとなり、私の勤務先では、診察費も含めて1万5000円くらいで処方しています。一方で、海外のテストステロン製剤は、フリーテストステロン値の上がり下がりの幅が少なく、効果が長期間持続するので、症状が安定し、3カ月に1度の通院で済むというメリットもあります。
 
 ――テストステロン補充療法の副作用には、どのようなものがありますか。
 基本的には、治療を中止するほど重篤な副作用はありません。目に見えるものとしては抜け毛やニキビなど、自覚できないものでは多血症、肝機能障害などがあり、3カ月に1度、定期的に採血し、チェックする必要があります。また治療の際は、睡眠時無呼吸症候群や心疾患系への影響にも注意します。
 ただし、前立腺がんを罹患しているとテストステロン補充療法はできません。前立腺がんのリスクが高まってくる50歳以降の患者さんには、テストステロン検査の際にPSA(前立腺腫瘍マーカー検査)も行い、値が高ければ前立腺がんの有無を調べます。ただ最近の研究では、男性ホルモンを抑制する治療を受けているケースは別として、テストステロンが前立腺がんを悪化させる危険性はないとも言われており、がんの切除後であればテストステロン補充療法をしてもよいという考え方も出てきています。いずれにしても、非常に慎重な判断が求められますので、適切に治療ができる医師に相談してください。
 乳がんを罹患している、または過去に罹患した男性にもテストステロン補充療法はできません。テストステロン補充療法によって乳がんになるリスクは非常に稀で、心配する必要はありませんが、既にあるがんについては悪化させるリスクが高いためです。
 また、副作用とは少し異なりますが、妊活中の男性も、テストステロン補充療法は避けた方がいいでしょう。体外からテストステロンを補充すると、脳の視床下部から分泌される性腺刺激ホルモン(human chorionic gonadotropin:hCG)が減り、結果的に精子の生産量も減ってしまうからです。そのため、妊活中でLOH症候群の治療が必要なケースでは、精製された性腺刺激ホルモンを投与し、「自前」のテストステロンが増えるよう促します。
 
 ――テストステロン補充療法ができない場合、どのような治療をすることになるのでしょうか。
 その場合は対症療法となり、テストステロン補充療法でなかなか効果が出ないときの選択肢ともなります。例えば、ほてりがあればそれを抑える薬を処方しますし、睡眠のトラブルには睡眠薬を使います。メンタルの不調は精神科の領域と重なることも多く、抗うつ薬も検討します。
 漢方薬は単体で使用するだけでなく、テストステロン補充療法と併用することもできます。女性の更年期症状改善にもよく使われる、桂枝茯苓丸けいしぶくりょうがん、当帰芍薬散とうきしゃくやくさん、加味逍遙散かみしょうようさんが代表的です。また、「バイアグラ」(ヴィアトリス製薬の登録商標)などのPDE5阻害薬の登場以前はED(勃起不全)の治療薬としてよく処方されていた八味地黄丸はちみじおうがんや柴胡加竜骨牡蛎湯さいこかりゅうこつぼれいとう、男性不妊の治療でよく用いられる補中益気湯ほちゅうえっきとうなども症状に応じて使うことがあります。

著者情報

イミダス編集部

関連記事

新着記事

imidasの最新記事はこちら!