男性の「更年期」? LOH症候群について知ろう~(後編)ホルモン補充療法やサプリの効果など気になる疑問をチェック
イミダス編集部
(構成・文/加藤裕子)
サプリメントは効果が期待できる?
――LOH症候群に効果があるというサプリや健康食品も市販されています。病院に行かずに、こうしたサプリを飲んでもいいですか。
マカ、アルギニン、高麗人参などを使ったサプリや健康食品が販売されていますが、もし本当に効果が高いのであれば、既に治療薬として使われているはずだと思います。それらのサプリの有効性を謳うデータは根拠が低いものが多いですし、値段も高額です。また、性機能など特定の不調のみをターゲットとする製品は、LOH症候群で現れる多様な症状をカバーできません。さまざまな不調の原因はテストステロン不足ですから、そこにアプローチする医療機関での治療が、費用面も含めて「コスパがいい」と言えます。
「忙しくて病院に行く時間がない」という人もいますが、たとえば「プラセンタ」や「にんにく注射」のようなものであれば、「打つと元気になる」とクリニックに週に何度も通ったりするわけです。副作用などの問題がなければ、にんにく注射やサプリと同じような感覚で、テストステロン補充療法で足りないものを補給すると考えてほしいと思います。
「忙しくて病院に行く時間がない」という人もいますが、たとえば「プラセンタ」や「にんにく注射」のようなものであれば、「打つと元気になる」とクリニックに週に何度も通ったりするわけです。副作用などの問題がなければ、にんにく注射やサプリと同じような感覚で、テストステロン補充療法で足りないものを補給すると考えてほしいと思います。
――性機能の低下が主な悩みの場合、ED治療薬を自己判断で服用してもいいですか。
ネットや海外輸入で販売されているED治療薬は偽造品が多いという報告があり、効果がないだけではなく、深刻な健康被害につながる危険性もあります。使うのであれば、必ず正規品を購入してください。ちなみに、2026年7月31日から「シアリス」(エスエス製薬の登録商標)というED治療薬が処方箋なしで購入できるようになりました。
――LOH症候群を予防するために、食生活や運動など、日頃の生活習慣で意識した方がいいことはありますか。
テストステロンがきちんと分泌されるためには、まずは生活リズムを整えることです。深夜まで夜更かしをしたり、昼まで寝ていたりせず、夜に6〜7時間は睡眠をとりましょう。もし途中で目が覚めても、目をつぶって横になっているだけでも体や頭は休まります。眠れないからと、起きてスマホをチェックすると、よけいに覚醒してしまうので、お勧めしません。
また、肥満や糖尿病はテストステロン値を下げる原因となります。低脂肪でローカロリーの食生活を心がけるのが基本ですが、食べたいものを我慢してストレスが溜まるのもよくありません。適度にバランスを取りながら、食事を楽しみましょう。亜鉛やビタミンD等の各種ミネラルやビタミンは、不足するとテストステロン値が低下すると言われています。例えば亜鉛は牡蠣、豚レバー、牛肉、ホタテなど、ビタミンDは魚介類や干し椎茸などに多く含まれますが、栄養は「これだけ食べればいい」というものではなく、いろいろな食品から摂る必要があります。食事制限が必要などの理由によりサプリで補う場合は、過剰摂取に気をつけてください。
また、肥満や糖尿病はテストステロン値を下げる原因となります。低脂肪でローカロリーの食生活を心がけるのが基本ですが、食べたいものを我慢してストレスが溜まるのもよくありません。適度にバランスを取りながら、食事を楽しみましょう。亜鉛やビタミンD等の各種ミネラルやビタミンは、不足するとテストステロン値が低下すると言われています。例えば亜鉛は牡蠣、豚レバー、牛肉、ホタテなど、ビタミンDは魚介類や干し椎茸などに多く含まれますが、栄養は「これだけ食べればいい」というものではなく、いろいろな食品から摂る必要があります。食事制限が必要などの理由によりサプリで補う場合は、過剰摂取に気をつけてください。
もちろん運動も大切です。ウォーキングやジョギング、水泳などの有酸素運動を30〜60分、週3〜5日程度行うと良いとされています。ただし、運動の強度や頻度が高くなればなるほど効果があるわけではなく、ハードすぎる運動はかえってテストステロン値を低下させるという研究結果もあります。トレーニングをしていてLOH症候群の症状が出てくるようであれば、少し運動量を控えてみましょう。
同じ運動でも筋トレの場合は、「やりすぎ」でもテストステロン値が下がるとは言われていません。とはいえ、いきなり高い負荷をかけるとケガのリスクも出てきます。年齢やそれまでの運動習慣に応じて、無理のないレベルから始めていきましょう。
同じ運動でも筋トレの場合は、「やりすぎ」でもテストステロン値が下がるとは言われていません。とはいえ、いきなり高い負荷をかけるとケガのリスクも出てきます。年齢やそれまでの運動習慣に応じて、無理のないレベルから始めていきましょう。
「もう若くない自分」にどう向き合うか
――「更年期」と言われると、「自分はもう若くない」などとネガティブな感情が引き起こされがちです。どのように向き合えばいいでしょうか。
野球のピッチャーにたとえると、どんな凄い豪速球を投げるピッチャーも、年齢と共に球速は衰え、変化球など技術で勝負するタイプに変わっていきます。その転換がうまくできないと、強いストレスを感じることになるのだと思います。
それまでは自然にできていたことなのに、相当頑張らないと同じパフォーマンスが達成できなくなったのだとしたら、それが現在のキャパシティー(自分の限界)ということです。バリバリ活躍していた人ほど、「できなくなった自分」を認めたくないという気持ちが働きがちですが、歳を重ねれば、「できる自分」を支えていたテストステロンが減っていくのは自然な変化なのです。
「歳を取っても第一線で活躍したい」という人もいますが、若いときと同じレベルのパフォーマンスをするためには、相当無理をしないといけないと思います。ある程度の年齢になったら、無理して頑張ることは自分の寿命を削ることにつながりかねません。「これは自分がやるべきだ」と思っていたことが本当にそうなのか、一度、捉え直してみると、「今の自分には必要ない」ということが見えてきます。「自分がやるべきだ」と思っていたことを手放すことができれば、気持ちにゆとりができ、体も楽になるでしょう。後の世代を育成するという意味でも、自分が抱えていた仕事を他の人に任せることは上の世代の重要な役目です。
それまでは自然にできていたことなのに、相当頑張らないと同じパフォーマンスが達成できなくなったのだとしたら、それが現在のキャパシティー(自分の限界)ということです。バリバリ活躍していた人ほど、「できなくなった自分」を認めたくないという気持ちが働きがちですが、歳を重ねれば、「できる自分」を支えていたテストステロンが減っていくのは自然な変化なのです。
「歳を取っても第一線で活躍したい」という人もいますが、若いときと同じレベルのパフォーマンスをするためには、相当無理をしないといけないと思います。ある程度の年齢になったら、無理して頑張ることは自分の寿命を削ることにつながりかねません。「これは自分がやるべきだ」と思っていたことが本当にそうなのか、一度、捉え直してみると、「今の自分には必要ない」ということが見えてきます。「自分がやるべきだ」と思っていたことを手放すことができれば、気持ちにゆとりができ、体も楽になるでしょう。後の世代を育成するという意味でも、自分が抱えていた仕事を他の人に任せることは上の世代の重要な役目です。
――広告などで「生涯現役!」といったキャッチコピーをよく見ますが、いつまでも若々しく活力がある自分でいたいという願望も強いのではと感じます。
「生涯現役!」は、性機能向上を謳う製品のアピールに使われることが多いですね。これまで泌尿器科医として多くの患者さんを診てきましたが、身体やメンタルの衰えは「歳だからしょうがない」と受け入れられても、性機能については諦めきれない男性が少なくないと感じます。しかし、朝の勃起が少なくなったり、セックスの途中で萎えてしまったりするのは、歳を取れば当たり前に起こることです。骨盤底筋を鍛えるなど、性反応や性機能の「基礎体力」を維持することは大切ですが、年齢相応の変化にジタバタしても仕方ありません。
性機能が衰えても、性欲についてはまた別の話です。中高年はまだ「枯れていない」年齢ですが、若いときと比べれば、ずっとコントロールしやすくなっているのではないかと思います。
性機能が衰えても、性欲についてはまた別の話です。中高年はまだ「枯れていない」年齢ですが、若いときと比べれば、ずっとコントロールしやすくなっているのではないかと思います。
森鷗外が『ヰタ・セクスアリス』という自伝的小説で性欲を「虎」にたとえている一節があり(※)、彼自身は自らの強い性欲を飼い慣らしているが、放し飼いにしていると滅亡することもある、といった意味のことが書かれています。初めてその箇所を読んだとき、「自分と同じだ」と思いました。性欲が強い男性ほど、10〜20代のころは「虎」が隙あらば檻から出ようとし、それを必死で押さえつけなければならないことも多かったのではないでしょうか。
しかし、「虎」はいつまでも元気ではありません。いつしか飼い慣らされ、檻から出ようともしなくなります。そんな落ち着いた「虎」との時間も、穏やかで悪くはないと僕は思っています。
しかし、「虎」はいつまでも元気ではありません。いつしか飼い慣らされ、檻から出ようともしなくなります。そんな落ち着いた「虎」との時間も、穏やかで悪くはないと僕は思っています。
