デジタル改革法案成立で個人情報保護制度が形骸化する!~「デジタル独占体制」からの「監視国家化」を防ぐには
三宅弘( 弁護士、法学博士)
(構成・文/仲藤里美)
デジタル化がもっと進んで便利になるのであれば、少々プライバシーの侵害があっても、情報が国に流れても、そのくらい気にしないという人もいるでしょう。たしかに、今回の法律が運用されるようになっても、すぐに何か問題が起こるということはないかもしれません。
しかし、ここ数年で秘密保護法や共謀罪が成立し、監視カメラや顔認証技術と結びついて監視社会化が進む中で、今回の法律が出てきたという点はやはり警戒すべきです。マイナンバーカードを保険証や運転免許証などさまざまな身分証明書と結びつけようという政策も次々に浮上しています。政府が個人データを利用して、邪魔だと思った人を陥れる、そういう使い方がされないとは誰にも言い切れません。
また民間企業の情報もデジタル庁に一元管理されるということは、ポイントカードや交通系IC、アプリを使うために登録した情報や使用の内訳も対象になりうるということです。自分の買い物歴、移動歴、検索履歴や「いいね!」などが一カ所に集まり、まとめて第三者に提供・利用されるとしたらどうでしょうか。
「私は政府に逆らうようなことはしないから関係ない」? でも、多くの人がそう思っている間に、社会全体が「監視国家」に向けてどんどん突き進んでいってしまうかもしれません。ひたすら便利さや効率を追求していった先にあるのは、自由にものを言えない全体主義国家かもしれない──。そのことはしっかりと認識しておくべきだと思います。
法律はすでに成立してしまったけれど、これで終わりだと放置するわけにはいきません。まずは、個人情報保護委員会が適切に機能し、きちんと情報が保護されていくのか、チェックしていく必要があります。そしてこの先、政権が代わるようなことがあれば、もう一度法律を変え、個人情報保護が機能するようにしていくこともできるでしょう。その法改正に備えて、しっかりと問題点を洗い出し、認識を広めて準備をしておくことが必要だと考えています。

著者情報
弁護士、法学博士
三宅弘
みやけ ひろし
1953年福井県生まれ。78年東京大学法学部卒業。83年弁護士登録(第二東京弁護士会)。93年筑波大学修士課程経営・政策科学研究科修了、2020年京都大学大学院法学研究科法政理論専攻博士後期課程研究指導認定退学(博士(法学))。東京都における情報公開制度のあり方に関する懇談会委員、内閣府・高度情報通信社会推進本部個人情報保護検討部会委員、総務省・行政機関等個人情報保護法制研究会委員、内閣府・公文書等の適切な管理、保存及び利用に関する懇談会委員、総務省・情報公開法の制度運営に関する検討会委員などを歴任。著書に『監視社会と公文書管理――森友問題とスノーデン・ショックを超えて』(花伝社、2018年)、『知る権利と情報公開の憲法政策論――日本の情報公開法制における知る権利の生成・展開と課題』(日本評論社、2021年)など多数。