トランプ政権時代に求められるこれからの日米外交(2)
猿田 ちなみに直木賞をとられた中島さんの小説『小さいおうち』は戦争中のお話ですよね。戦前から戦争中、戦後にかけて。当時ですら、普通に生活をしている人には、戦争というのは、実はそんなに身近なものとは感じられなくて、戦争中に銀座へおしゃれして買い物に行ったり、スキーに行こうとしたりするわけですよね。ああいうものを書こうと思われたモチベーションというのは、どんなところにあったんですか。
中島 『小さいおうち』は2008年とか、09年とか、それこそ民主党政権ができた頃に書いていたんですけど、その頃は今とずいぶん空気が違うので、「世の中に警鐘を鳴らしましょう」みたいなことは全然なかったんですね。ただ、割と個人的な興味で、その時代は、本当はどういう時代だったのかを知りたくて、調べて書いたんです。
ただ、小説が出て何年かしたら、だんだんあの時代に似てきた。『小さいおうち』を読んでいると怖くなりますとおっしゃる方が増えて、自分でもそうだなと思うようになりました。例えば中国で戦争が始まっても、普通の人たちは気がつかないというか、それでちょっと豊かになって、生活が、何ていうか、楽しくなったくらいの感覚でしかない。そういうのが怖いですよね。
例えば南スーダンとか、今、何が行なわれているか誰も知らないじゃないですか。ほとんど普通の人は知らない。でも、もう何ていうか、ああやって、憲法の解釈を変えて、行くことになっちゃって、駆けつけ警護とか、そういうことになっている。やっぱり、今の私たちの生活と、外で行なわれていることとの乖離があって、普通の人はあんまり気づいていないという状態とか、似ているなと思います。
猿田 『小さいおうち』は、ほんとに当時の描写が細かく、いろんな資料を調べて書かれたんだなとよくわかります。戦争というのは、こうやってヒタヒタと、気づきもしないときに寄ってきて、気づいたら人が死んでいたみたいなことなのかもしれないなということが、よくわかる。それだけを書かれたかった本でもないんでしょうけれども、それがすごくよくわかるので、ぜひみなさんにお読みいただければと思います。
著者情報
作家
中島京子
なかじま きょうこ
1964年生まれ。女性誌編集者を経て、2003年、田山花袋の『蒲団』を下敷きにした小説『FUTON』でデビュー。10年、『小さいおうち』で直木賞を受賞。14年には同作が山田洋次監督により映画化された。同年、『妻が椎茸だったころ』で泉鏡花賞を受賞。著書に『彼女に関する十二章』、『長いお別れ』、『かたづの!』ほか多数。
新外交イニシアティブ代表
猿田佐世
さるた さよ
1977年生まれ。早稲田大学法学部卒業。国際人道支援NGO活動などを経て、2002年に弁護士登録。08年、米コロンビア大学ロースクールにて法学修士号取得。09年、ニューヨーク州弁護士登録。12年アメリカン大学国際関係学部にて国際政治・国際紛争解決学修士号取得。著書に『新しい日米外交を切り拓く 沖縄・安保・原発・TPP、多様な声をワシントンへ』(集英社クリエイティブ、2016年)などがある。