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社会問題

JKビジネスの甘い罠

自己責任論だけで語れるのか?

仁藤夢乃(社会活動家)

(構成・文/濱野ちひろ)

 そんな社会を生きる子たちは、SNSへの警戒心が極端に低い。誰とでも安易につながってしまうし、個人情報もアップしてしまう。ちょっと仲がよくて心を開いている彼から頼まれれば、自分の裸の写真を撮って送ることなど、記念写真を送るぐらいにたやすいことなのです。
 JKビジネスの業者が恐ろしいのは、そうした彼女たちの心理、行動パターンというものを親や教師などよりよほど深く理解していて、そこを突いて誘惑してくるところです。行き場がなく、お金もなく、街をさまよう女の子たちにとって雨風をしのげる暖かい寝場所や食べ物、それらを提供してくれて話も聞いてくれるお兄さんが、どんなに頼もしく思えるでしょうか。それに比べて児童福祉施設の職員、警察、病院、あるいは行政の人々など、本来、彼女たちを保護すべき大人たちの考えや動きは、あまりにも追いついてないと感じます。
 例えば、ある子のケースです。家庭で虐待を受け、家出してJKビジネスに引きずり込まれた女の子が、児童相談所に相談をしました。しかし児童相談所は、虐待の背景を調査せず彼女の保護を拒否。彼女は「売春しているのなら警察に行きなさい」と入所を断られ、仕方なく警察に行きます。ところが、訪ねた先の少年課では「なんで売春なんかしたんだ」と、ただただ怒られた。事情を説明しても「自分で好きでやったんだろう」と言われたそうです。その子のLINEのアカウントには、買春者のアドレスが何百件と入っているのに、それについての捜査も結局されませんでした。「証言に確実性がない」という理由で、訴えを聞き入れてさえもらえなかったそうです。
 そんな彼女が受けた絶望感は、果たして自己責任なのでしょうか。「彼女はJKビジネスを好きでやった」と言い切れるでしょうか。悲しいかな、まわりの大人たちだけでなく、子どもを守るべき各種の施設や機関も、保護の機能を果たせていないのが現状だと感じています。
 JKビジネスは、若い女の子たちが主体的に行うセックスワークではありません。彼女たちをうまく言いくるめて搾取し、性を売らせて利益を得るれっきとした児童買春であり、人身取引にも通じる犯罪です。
 14年6月、アメリカ国務省の人身取引監視対策部が「日本のJKビジネスは人身取引である」という報告書を出しました。私は報告書の担当者と直接、話をする機会を得たのですが、その時に彼らは「私たちは、少女たちがJKビジネスを好きで行っている、という意見には反対します。なぜならば彼女たちがそうならないよう、大人たちが守るべき立場にあるからです」と言っていました。
 私もその意見に全く同感です。しかし、このあまりに明白な事実を、日本社会ではなぜか一生懸命に説明しないと理解されない、受け入れてもらえないというのもまた、憤慨すべき事実なのです。

著者情報

社会活動家

仁藤夢乃

にとう ゆめの

1989年生まれ。中高時代に街をさまよう生活を送った経験から、10代女性を支える活動を行っている。これまでに夜の街でのアウトリーチ、シェルターでの保護や宿泊支援、シェアハウスでの住まいの提供といった活動を展開。第30期東京都「青少年問題協議会」委員。厚生労働省「困難な問題を抱える女性への支援のあり方に関する検討会」構成員を務めた。TBS「サンデーモーニング」にコメンテーターとして出演中。著書に『難民高校生』(英治出版)、『女子高生の裏社会』(光文社新書)。

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