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一語千金

ゴーイングコンサーン

[going concern]
企業が誓う「永遠の愛」

玉手義朗(エコノミスト)

 「死が二人を別つまで、愛し続けることを誓いますか?」
 結婚式でお馴染みの誓いの言葉だ。結婚は、一組の男女が共に生活し、苦楽を共にして行くという約束をすること。誓いの言葉は、この約束が結ばれたことを、近親者や友人達などに広く知らしめる役割を持っている。
 企業経営にも同じような誓いの言葉がある。「ゴーイングコンサーン」だ。
 コンサーン(concern)という言葉には様々な意味があるが、ここでは企業、事業などといった意味で、それがずっと続く(going)ということから、「企業の継続性」と訳されている。
 今年も、来年も…と、可能な限り経営を継続して行くことは、株主や取引先との関係を維持する上での大前提だ。そこで、「ゴーイングコンサーン」という、「永遠の誓い」を立てる必要があるというわけだ。
 ゴーイングコンサーンは「誓い」であり、婚姻届のように明文化された契約ではない。しかし、企業社会に不可欠なモラルとして、財務情報などの作成・開示に際して、特に重要視される。
 決算などの財務情報は、その企業の株主や、株式の購入を検討している投資家にとって、極めて重要な情報だ。業績が悪化した場合には、損失を先送りにするといった手段を使って、決算を良く見せることも可能だが、企業が継続して行く限り、そのツケはいつか必ず支払うことになる。ゴーイングコンサーンの前提に立てば、こうした手段は許されないというわけだ。
 ところが、バブル崩壊後の景気低迷の中、ゴーイングコンサーンの原則が破られ、投資家の信頼を裏切る事例が頻発した。決算情報には経営上の問題が全く記載されていないにもかかわらず、その直後に倒産するなど、「永遠の誓い」をしながら、心の底では「離婚」を決意していたのだ。
 そこで、ゴーイングコンサーンを徹底する法整備が行われた。2003年3月期の決算から、企業が決算発表をする場合、それをチェックする公認会計士に、ゴーイングコンサーンに関する「注記」の明示を義務づけたのである。
 具体的には、当該企業が1年以内に大幅な赤字や債務超過に陥る可能性など、ゴーイングコンサーンが脅かされる状況にある場合、「注記」として決算情報に加えて投資家に知らせるのだ。
 永遠の愛を誓った夫婦が離婚の危機にある場合、「お互いに愛情がなくなり、関係は冷え切っています」と、関係者に知らせることを義務づけたのであった。
 「ゴーイングコンサーン」は、企業にとっての「永遠の誓い」だ。企業社会のモラルを維持するためには、この誓いを守り続けることが必要不可欠なのである。

著者情報

エコノミスト

玉手義朗

たまて よしろう

1958年生まれ。筑波大学卒。東京銀行、マニュファクチュラース・ハノーバー銀行などで、外国為替取引に携わる。その後、テレビ局で経済部デスクなどを経て、現在はフリー。著書に『円相場の内幕』(1995年、集英社)、『経済入門』(共著、2004年、ダイヤモンド社)がある。

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