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連載

「オヤカク」「オヤオリ」が今時の親子関係を物語る ~不安定経済の中で変わる就職事情

第52回

大内裕和(武蔵大学教授)

 戦後日本の経済成長は、子どもが「親の家から離れる」=「離家(りか)」することを容易にしました。1950~60年代には中学校・高校の卒業者が、労働力として地方から都市圏(首都圏・近畿圏・東海圏)に大量に移動しました。雇用先の多くは、中卒・高卒の労働者に社宅や住宅手当、あるいは一定以上の給料を提供することで、彼らが実家を離れて都市部に住み、生活することを可能にしました。

 しかし、90年代以降の経済状況の悪化と新自由主義政策によって、若者の雇用は不安定化し、非正規雇用の増加と若年層の低賃金化が進みました。戦後の日本社会で続いてきたはずの「子世代が親世代より高学歴化して豊かになる」状況が、「子世代が親世代より高学歴化しても貧しくなる」状況へと一変しました。

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 子世代の貧困化は、学校を卒業して仕事に就いても「離家」できず、「親同居」を続けるという社会現象を生み出しました。総務省統計研修所の「親と同居の未婚者の最近の状況(2016年) 」によれば、20~34歳の総人口に占める親と同居している若年未婚者の割合は、1980年の29.5%から急速に上昇し、2016年には45.8%となっています。文部科学省の「学校基本調査」によると、近年の高等教育機関(大学・短大・専門学校)への進学率は80%を上回っていますから、これは大学等を卒業しても親と同居を続ける若者が大勢いるということを示しています。中卒・高卒で「離家」が当然のように可能だった時代とは大違いです。

 この「離家」に見られる経済的自立の困難が、若者の多くが保護者に依存せざるを得ない社会的条件をつくり出していると私は考えます。親が子の生活や人生にことごとく干渉するようになった状況を考える際に、「親も悪いが従う子も悪い」「子の自立心が弱い」などと心理面のみ捉えると事態を正確に把握できません。卒業後も親に頼らないと生きていけない時代になってしまったから、今の若者は社会人になるにも親の意見を受け入れざるを得ず、自立心をもちにくくなっているという背景を読み取っていただきたいです。

 現代の若者が自立するには、それを可能にするための経済的・社会的条件を整える支援を強化することが重要です。具体的には最低賃金の抜本的上昇など低賃金の是正、奨学金返済や住宅費の負担軽減などが求められます。

 オヤカクとオヤオリが急速に広がっていますが、その対象となっている学生はすでに「成人」=「大人」です。親(保護者)と子どもは別の人格であり、大人である彼らが自分の人生にとって重要な就職先を自由に選ぶことができないのは、いかなる理由があっても人権侵害だと私は思います。「若者の自立」を実現できない社会は必ず衰退します。オヤカクとオヤオリを実施している企業と、それに関わる保護者、そして日本社会のあり方が問われているのではないでしょうか。

著者情報

武蔵大学教授

大内裕和

おおうち ひろかず

1967年、神奈川県生まれ。東京大学大学院教育学研究科博士課程単位取得。松山大学教授、中京大学教授を経て2022年度より現職。「入試改革を考える会」代表。「奨学金問題対策全国会議」共同代表。著書に「ブラックバイトに騙されるな」(集英社)、「教育・権力・社会」(青土社)、「ブラック化する教育 2014-2018」(青土社)などがある。

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