「ブラックバイト」から「バイト漬け」へ ~長時間労働、かけもち化が進む学生アルバイト
大内裕和(武蔵大学教授)
「教育機関が何でもかんでも対応して抱え込む傾向」については、私も疑問をもっています。しかし、このアルバイト問題については、教育機関側でも対策が求められていると私は考えます。その理由は、過重なアルバイトが大学生の学びや学生生活のあり方に、甚大な悪影響を与えているからです。
近年、真面目な学生が講義やゼミの時間に集中できなくなったり、レポートの提出を滞らせたり、中には突然長期欠席するようになって、私が相談を受けるケースが多数ありました。理由はさまざまですが、そのトップはアルバイトです。
今回のUAゼンセン調査で、職場でハラスメントを受けた学生が「仕事へのモチベーションが下がった」や「アルバイトに行きたくなくなった」との回答が多かったことはすでに書きましたが、影響はそれだけではありません。アルバイト先でハラスメントを受けた学生が、「授業・ゼミへのモチベーションが下がった」や「大学の講義に行きたくなくなった」という事例に、私はしばしば出会いました。ハラスメントは深刻な人権侵害ですから、学生生活に影響が出ることは十分にあり得ます。ハラスメントを受けていなくても、過酷なアルバイトで「授業中に起きていられない」や「課題に取り組む時間がない」という事例はさらに多数起きています。
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アルバイト先でのハラスメントや「アルバイト漬け」生活によって、大学での深い学びや充実した学生生活をすることが困難となっています。ブラックバイトの定義の核心は、「学生であることを尊重しないアルバイト」ですが、この意味でのブラックバイトは現在でも継続していると見ることができるでしょう。
大学での対策としては、さらなる相談体制の整備や拡充が望まれます。大学の「学生相談室」などの部門で、アルバイトを相談項目の一つとして明記し、学生に周知することが重要です。加えて私もメンバーの一人である「ブラックバイト対策弁護団あいち」、「ブラック企業被害対策弁護団」の東京ブラックバイト相談担当、厚生労働省の総合労働相談コーナー、労働基準監督署、都道府県労働局などの相談機関についての情報提供も、学生に対して積極的に行うべきです。
教育内容においても、中学校卒業で働く者が少数ながら存在すること、高校生のアルバイトが広がっている現状を考えれば、中学校・高校段階で「労働法」の教育が必修とされるべきです。大学では中学校・高校よりも高度なレベルで、卒業後の働き方も含めて、労働法教育が幅広く展開されることが強く求められます。
アルバイトをしている生徒・学生は、職場では「労働者」ですが、高校や大学では「生徒」「学生」です。職場でのハラスメントや過酷なアルバイトが生徒・学生の「学ぶ権利」を奪っている現実がある以上、教職員をはじめとする教育関係者は、この問題から目を背けてはならないと思います。