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連載

「若者のミカタ」の連載開始にあたって

第0回

大内裕和(武蔵大学教授)

 皆さん、こんにちは。

 私は1967年に神奈川県で生まれました。高校時代以来、教育問題に関心を持っていた私は東京大学教育学部の大学院に進学し、教育社会学という分野で研究者の道を目指しました。現在は愛知県にある中京大学で大学教員として働いています。大学で学生に教えることと、教育社会学の研究をすることが主な仕事です。

 大学教員として学生と接していると、予想もしなかったことに気が付くことがあります。「奨学金」の問題を発見したのも、講義やゼミでの学生との交流からでした。

 自分の講義を受けている学生の半数以上が奨学金を利用していること、その大半が貸与型であり、卒業後に多額の返済をしなければならないことを知った時には衝撃を受けました。私の学生時代の奨学金利用者は、全大学生の2割前後だったからです。

 中京大学で奨学金問題を扱ったゼミを受講していた学生2人が、「奨学金制度の改善に取り組みたい」と私に伝えてくれて、それに対して「できる限りの協力はするよ」と答えたことが大きなきっかけとなりました。

 2012年9月1日、学生たちが「愛知県 学費と奨学金を考える会」を結成し、私は会の相談役になりました。そして13年3月31日には、弁護士・司法書士など法律家や教育関係者を中心とする全国ネットワーク「奨学金問題対策全国会議」が結成されました。

 私はこの会議の共同代表となり、奨学金制度の改善に取り組むこととなりました。

◆◆

 奨学金問題への取り組みを通じて、大学生たちの日常生活の困難をより詳しく知るようになりました。そうして、私たちの時代には比較的楽であったアルバイトが近年は過酷化して学生たちを追い込んでいること、学生たちが時間を拘束され自由に研究や学習に取り組むのが困難になっている現実を知りました。

 13年6月、私は「学生であることを尊重しないアルバイト」のことを「ブラックバイト」と名付けました。この言葉はSNSを通じて、またたく間に学生たちの間に広がりました。8月以降になると、新聞やテレビなどマスコミからの取材が激増しました。

「奨学金」や「ブラックバイト」が社会問題化することで、学生や若者の「貧困」への人々の理解が広がり、活動の成果も上がるようになりました。

 14年4月には、日本学生支援機構が奨学金の返還猶予期限を最長10年まで延期し、延滞金賦課率の引き下げ、有利子から無利子貸与への移行が始まりました。ブラックバイト問題では、専門の弁護団「ブラックバイト対策弁護団あいち」の結成、数多くの学生ユニオン・若者ユニオンの結成、政府による一定の対策などの動きが進みました。

 とりわけ奨学金については16年末、日本学生支援機構にこれまで存在しなかった「返済不要の奨学金」=「給付型奨学金」の導入が決まりました。

 19年になってからは「入試改革を考える会」の代表として、英語民間試験や国語・数学の記述式問題の導入など、とくに大学入学共通テストに疑問を投げ掛ける活動をしています。英語民間試験については、経済格差や地域格差を拡大する危険性が広く知られることとなり、先頃20年度からの「実施見送り」が決まりました。そのため、現在は国語・数学の記述式出題に議論が集まっています。

◆◆

 振り返ってみると、大学での学生との交流を通じて現代社会の若者が置かれている厳しい現実を知り、それを世の中に訴えて若者の困難な状況を改善することが、私の社会活動の重要な部分を占めてきたことが分かります。

 若者の困難な状況を改善することは、社会の未来を切り開くことにつながります。これから始まる連載「若者のミカタ」では、「若者の見方」を伝えることを通じて、「若者の味方」になる方法を読者の皆さんと一緒に考えていきたいと思います。

                                            大内裕和

 

大内裕和著(集英社クリエイティブ)

●連載第1回「萩生田文科相『身の丈』発言が生み出した教育国会」はこちら!

著者情報

武蔵大学教授

大内裕和

おおうち ひろかず

1967年、神奈川県生まれ。東京大学大学院教育学研究科博士課程単位取得。松山大学教授、中京大学教授を経て2022年度より現職。「入試改革を考える会」代表。「奨学金問題対策全国会議」共同代表。著書に「ブラックバイトに騙されるな」(集英社)、「教育・権力・社会」(青土社)、「ブラック化する教育 2014-2018」(青土社)などがある。

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