男性の「更年期」? LOH症候群について知ろう~(前編)中高年男性が悩むさまざまな不調の原因は?
イミダス編集部
(構成・文/加藤裕子)
受診の目安になる症状は?
――LOH症候群で受診したい場合、何か目安となる症状はありますか。
LOH症候群の症状は非常に多様ですから、「こういう状態になったらLOH症候群」という特定の症状があるわけではありません。「なんだか調子が悪い」「仕事のパフォーマンスが落ちている」と感じたら、気軽に病院に来てほしいですね。ポイントは、「しんどくなってしまう前に受診」です。「しんどい」と感じるのは、何らかの無理をしているわけですから、体が「1回休め」と言っているんだな、と考えましょう。
「自分の不調を認めたくない」という気持ちから、「これくらい、たいしたことないだろう」と我慢してしまう人も多いのですが、まずは「調子がよくない」と自覚することが大切です。後述するAMS(Aging Males’ Symptoms)の問診票の項目をチェックするときも、客観的に見れば「重い」「非常に重い」症状なのに、過小評価しがちです。「『絶頂期は過ぎた』と感じる」「力尽きた、どん底にいると感じる」「性的能力の衰え」など、「重いというほどではないかなあ」と思いたくなる項目もありますが、できるだけ正直に記入しましょう。その方が治療につながり、結果的に症状が改善する可能性が高くなります。
男性は、そもそも病院に行くこと自体が少なく、それが受診のハードルのひとつになっているように思います。僕自身も、実は白衣を見ると血圧が上がるタイプなので、「病院が苦手」という気持ちはよくわかります。それまで経験しなかったさまざまな不調が出てくると、「何か悪い病気なのでは」という不安が募るかもしれませんが、受診して診断がつけば楽になりますし、LOH症候群自体は怖いものではありません。
――周囲が気づける「更年期」のサインはありますか。どのように声掛けをすればいいでしょうか。
わかりやすいのは、以前と違って怒りっぽくなった、ということです。おそらく、テストステロンが減った影響で、以前のようにはできないことが増えてイライラしてしまうことや、「なんとかなるさ」といった根拠のない自信や心の余裕が失われやすくなるからだと思います。
性的な衰えもわかりやすい指標ではありますが、デリケートなことですし、人によっては「認めたくない」という心理も働きます。声掛けをするとしたら、「最近、疲れているんじゃない? 男性にも更年期があるみたいだから、一度、診てもらったら」といったアプローチがよいかもしれません。
――受診するときは、どの診療科に行けばいいでしょうか。
泌尿器科など、男性更年期の対応ができる医療機関を受診してください。メンタル系の不調がメインの場合は精神科も選択肢となりますが、しばらく通っても改善しないのであれば、LOH症候群の可能性がありますので、泌尿器科にも相談してみることをお勧めします。逆に、テストステロンを補充してもメンタル面の不調が続くようなら、改めて精神科に相談してみましょう。
男性ホルモンの検査値だけではわからない
――LOH症候群かどうかを診断するために、医療機関ではどのような診察をするのでしょうか。
ひとつは、テストステロンの値を採血でチェックします。テストステロンを測るときには、総テストステロン(total testosterone:TT)を測る方法と、フリーテストステロン(遊離テストステロンとも。free testosterone:FT)を測る方法があり、国際的には総テストステロンの値が診断基準とされています。ただ、テストステロン値の測定方法は統一されておらず、日本でもかつてはフリーテストステロン値のみを基準としていました。というのは、日本人を対象とした調査で、年齢が上がっても総テストステロン値はあまり下がらないのに対し、フリーテストステロン値は低下するというデータがあったためです。2022年に、日本泌尿器科学会・日本メンズヘルス医学会による診療ガイドラインが改訂され、現在では総テストステロン値が250 ng/dL以下の場合、フリーテストステロン値も検査し、7.5 pg/mL以下であれば治療の必要があるとされています。
とはいえ、テストステロン値はあくまで参考値です。テストステロン値は1日の間でも変動がありますし、正常とされる範囲でもLOH症候群と思われる症状が出ている人もいます。そこで、診察では「AMSスコア」という問診票を併用します。

全部で17項目あり、それぞれを「なし」=1点、「軽い」=2点、「中等度」=3点、「重い」=4点、「非常に重い」=5点で患者さんに記入してもらいます。合計スコアが26点以下=正常、27~36点=軽度、37~49点=中等度、50点以上=重症となり、それに応じて治療するかどうかを判断します。
――なぜ、テストステロン値は問題がないのに、症状が出るのでしょうか。
考えられるのは、その人のもともとのテストステロン値が高かったのではないかということです。特にフリーテストステロン値は個人差がかなり大きいのですが、若い頃に精力的だった人は、おそらくテストステロン値が高いので、それが減った分の影響を受けているのだと思います。
最近日本から、AMSスコアとテストステロン値に有意な相関はなく、テストステロン値が正常でもテストステロン補充により多くの人で有意に症状が改善されることが報告されました。僕も以前から、テストステロン値が正常でもAMSスコアが高い(更年期症状がある)人には積極的にテストステロン補充を行っていて、症状が改善されることが少なくないことを経験していたので、この報告には思いっきり納得できました。
また(実は)、僕もわりと最近LOH症候群経験者になったので我が身を持って実感しているところです。僕の場合も、症状を自覚し始めた頃のフリーテストステロン値は10.6 pg/mLで、現在の基準では正常値なのですが、自分ではもともとの値よりだいぶ下がっているのではと感じていました。とりあえず経過観察をしたところ、半年後、いよいよしんどくなった段階で、フリーテストステロン値は6.1 pg/mLにまで下がっていました。6カ月で4pg/mLも減ってしまったわけです。「これはつらいはずだ」と、治療を開始しました。
ただし、症状が出る前にテストステロン値を測っていなければ、「通常値」を知る方法はありません。できれば若いときに一度、テストステロン値を測る機会があればよいと思います。唾液で測る簡易キットもあるようですが、信頼性の点ではやはり医療機関での採血検査が安心です。
(後編「ホルモン補充療法やサプリの効果など気になる疑問をチェック」につづく)
【後編の目次】
ホルモン補充療法で「復活」できる?
サプリメントは効果が期待できる?
「もう若くない自分」にどう向き合うか