「偏差値」から読み解く「大阪維新の会」の財政運営 分配システムの破壊からベーシックインカムへ
吉弘憲介(桃山学院大学経済学部教授)
既存の利益集団から分配を剥ぎ取ることと、個別の集団に関係ないユニバーサルな分配をデザインする手法は、従来の地域団体や社会的困窮層といった「集団」や「階層」に属していない、外側から来た新興住民層の支持に結びつく。大阪維新の会の支持が、タワーマンションの建設が進む大阪中心部、比較的大阪市在住歴が短い人々が住むエリアにおいて高い実態は、上記の仮説を補強する。
その点で、大阪維新の会が行った政策手法は、“大阪特殊の問題”ではなく、日本や世界の他の都市財政・政治にも波及する特徴を持っていることをあわせて指摘しておきたい。
最後に一点触れておきたいのは、財政とは本来多様な利害を持つ集団と個人の間において資源を配分することで利害調整を図るシステムであるということである。以前からある集団や階層を既得権益として排除し、そこから資源を引き上げて、メンバーに頭割りに配れば、公平平等な分配が達成されて一見、問題が解決したように思いがちである。しかし、社会における人々のニーズや困難(「リスク」)は、本来複雑で個別具体的なものである。
既得権益とされる集団や組織には、本来、個人の特定の利害や利益を集める「レンズ」の役割がある。このレンズに集まった「リスク」に対応するように、資源を配ることは、「レンズ=集団」の外にいる人々からは無駄と映るかもしれない。しかしそれは、複雑化した社会の困難への対応を図る上で、必要な複雑さかもしれない。
集団への分配を既得権益と批判し、ユニバーサルに分配すれば即座に問題が解決するような改革方針は、利害調整が本来「複雑」で妥協的であるという事実を無視していないだろうか。新旧の集団と個人間の利害構造から起きる対立を、いかなる分配のデザインのもとで調整するかは、なお、大阪市という都市財政の運営において課題として残されていることを指摘しておきたい。
※本稿は、拙稿「大阪維新の会による大阪市財政運営の実態――人口一人当たり歳出・歳入データを用いた他都市比較による分析」(『自治総研』2021年10月号所収)、での分析をもとに、エッセンスを抽出したものである。上記原稿は、インターネットを通じて無料でアクセス可能であるため、本稿では省略した注釈及び図の出典、またより詳しい説明については、ぜひ、大本の拙稿に当たられたい。
著者情報
桃山学院大学経済学部教授
吉弘憲介
よしひろ けんすけ
1980年生まれ。東京大学大学院経済学研究科博士課程単位取得退学。専門は、財政学、租税政策。下関市立大学准教授、桃山学院大学准教授を経て、2021年より現職。