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一語千金

為替予約

[forward exchange contract]
海外旅行前に外貨を買う

玉手義朗(エコノミスト)

「今のうちに、ドルを買っておいた方がいいかなあ…」
 アメリカ旅行を3カ月後に控えた友人が、相談を持ちかけてきた。1ドル=100円を突破したことで、今のうちに旅行費用をドルに換えておこうと思う半面、もしも、さらにドル安・円高が進み、出発の時に90円になっていたら悔しいが、100円台に戻ってしまってもやはり悔しい思いをすることになるというのだ。
 しかし、相場の動きは誰にも予想できない。私は、とりあえず旅行代金の3~5割をドルに換え、残りの分は旅行出発まで様子を見ることを提案した。
 実はこれが「為替予約」だ。旅行の出発日という「決済日」の前に外国為替取引を行っておき、為替相場の変動を回避する。為替相場を事前に確定させておくことから、「予約」という言葉が使われるようになった。
 為替予約は、自動車メーカーなどの輸出企業、石油会社などの輸入企業など、外貨建ての取引を行っている企業が日常的に行っている。
 例えば、アメリカに機械を輸出している企業が、半年先にドルで輸出代金を受け取る予定だとしよう。その企業の財務担当者が今後もドル安・円高が進むと判断した場合、決済日に合わせてドル売り・円買いの為替予約を行う。外貨を円に換える為替予約は、輸出企業が多く行うことから、「輸出予約」と呼ぶことが多い。反対に、石油会社のように円からドルなどの外貨に換える為替予約を「輸入予約」と呼ぶことが一般的となっている。
 為替予約の動向は、日々の為替相場を動かす要因となる。為替予約は、決裁日に取引されるわけではなく、「予約」された段階で、直ちに外国為替市場に影響を与えるのだ。
 個人で外貨を購入する場合、銀行に行ってその日の相場でドルの現金や旅行小切手を手に入れ、出発日まで手元に置いておく。「為替予約」も基本的に同じだ。輸入企業の場合、半年後にドルの支払いがあっても、まず、その日、その瞬間の外国為替市場の相場でドルを購入し、その後に決裁日に合わせて資金のやりとりを調整する。
 したがって、輸入予約が大量に行われると、外国為替市場ではドル買い・円売りの圧力となって、市場をドル高・円安に動かす要因となる。反対に輸出予約が活発に行われると、直ちに外国為替市場のドル売り・円買い→ドル安・円高の要因となるのだ。
 為替予約の期日が3カ月後でも1年後でも、その影響は現在の外国為替相場に現れる。「今日の東京外国為替市場は、円高・ドル安が進行しました。輸出予約が大量に出されたことが大きな要因です…」といった市場の分析が行われるのは、こうした理由からなのだ。
 これからどんどん円高・ドル安が進むなら、輸出予約を増やして、損失を回避したい。でも、円安になったら、せっかくの利益が消えてしまう。
 海外旅行を前にした個人が悩むように、企業の財務担当者は、日々の為替市場の動向をにらみながら、「為替予約」を取るタイミングを模索しているのである。

著者情報

エコノミスト

玉手義朗

たまて よしろう

1958年生まれ。筑波大学卒。東京銀行、マニュファクチュラース・ハノーバー銀行などで、外国為替取引に携わる。その後、テレビ局で経済部デスクなどを経て、現在はフリー。著書に『円相場の内幕』(1995年、集英社)、『経済入門』(共著、2004年、ダイヤモンド社)がある。

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