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一語千金

独占禁止法

[Anti-Monopoly Law]
独り占めは許しません!

玉手義朗(エコノミスト)

「今年も絶対に勝てないよ。毎年のことでイヤになる…」
 プロ野球好きの知人が嘆く。彼の応援するチームは資金力がなく、有力な選手をなかなか獲得できない。一方で、ライバルの某チームは資金力が豊富で、有力選手を次々に獲得、スタートラインから圧倒的な優位に立っているというのだ。
 プロスポーツで時々見られる現象だが、一つのチームがあまりに強すぎると、ゲームに対する興味が薄れ、ファンが離れてしまう恐れも出てくる。
 経済活動でも同じことが言える。1社、あるいは数社が市場を独占すると、自由な競争が行われなくなり、商品の価格を不当につり上げるなど、様々な弊害が生じる恐れがある。そこで、これを阻止するためのルールが設けられている。「独占禁止法」だ。
 独占禁止法の正式名称は、「私的独占の禁止及び公正取引の確保に関する法律」。あまりに長いことから、「独占禁止法」、さらに略して「独禁法」と呼ばれることもある。企業活動における「憲法」であり、公正取引委員会がその運用を行っている。
 独占禁止法の基本的な目的は、自由で公正な企業間競争を維持し、一般消費者の利益を守ること。具体的には、少数の企業による市場支配(私的独占)と、不当な取引の排除などに主眼を置いている。
 独占禁止法に基づいて、公正取引委員会が動いたケースの一つが、2001年に発表された日本航空と日本エアシステムの経営統合計画だ。
 公正取引委員会は、この経営統合が実現すると国内の航空路線の約5割を独占することになり、独占禁止法に違反する恐れがあるとして「待った」をかけた。これを受けた両社は、羽田空港の発着枠を一部返上するなど統合計画を修正して、最終的に公正取引委員会の承認を得ている。
 独占禁止法はこの他にも、採算を度外視した値下げ攻勢で競争相手を駆逐する「ダンピング」、企業同士が密約を交わして、一緒に値上げをする「カルテル」や談合なども禁止していて、公正取引委員会が監視の目を光らせている。
 しかし、企業が懸命な経営努力によって大きなシェアを占める場合もある。これを独占禁止法で自動的に規制するのは、逆に自由競争を阻害することにもなりかねない。選手達を一生懸命育て、チームを強くしたのに、それが独占だから認めないと言われては、企業のやる気を失わせることにもなりかねない。実際、独占禁止法の適用を巡っては、企業と公正取引委員会との激しい対立が発生、裁判に発展する場合も少なくないのである。
 各チームの力が均衡し、フェアなゲームが行われてこそプロ野球が面白くなるように、企業の競争が促進され、独り占めや自分勝手な行動が行われないようにすれば、消費者は大きな利益を受けることができる。それを実現するための厳格なルール、それが「独占禁止法」なのである。

著者情報

エコノミスト

玉手義朗

たまて よしろう

1958年生まれ。筑波大学卒。東京銀行、マニュファクチュラース・ハノーバー銀行などで、外国為替取引に携わる。その後、テレビ局で経済部デスクなどを経て、現在はフリー。著書に『円相場の内幕』(1995年、集英社)、『経済入門』(共著、2004年、ダイヤモンド社)がある。

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