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一語千金

家計調査

[Family Budget Survey]
隣人の家計簿をのぞき見る

玉手義朗(エコノミスト)

「お隣さんが薄型テレビを買ったみたい。自動車も買い替えるようだし、給料が増えたのかな…」
 他人の暮らしぶりは、誰でも気になるものだ。収入はどの程度で、どんなものを買っているのか…。人々の家計簿を、国のレベルで大規模にのぞき見ているのが「家計調査」である。総務省統計局が毎月行っている調査で、全国から選ばれた9000世帯を対象に行われている。
 調査内容はまさに家計簿そのものだ。支出については、衣食住の他、教育や通信費、娯楽などに分けて細かく集計されている。一方、収入についても、通常の収入の他に、特別な収入があった場合などのデータも細かく集められる。これに加えて、住宅ローンなどの負債や貯蓄についても、3カ月ごとに調査が行われているのだ。
 また、調査結果の集計も、「総世帯」の他に「総世帯のうち勤労者(サラリーマン)世帯」「二人以上の世帯」「単身世帯」などに分類して発表される。それぞれの生活形態ごとに、国民の家計をチェックしようというわけだ。この中でも、最も注目されるのが「二人以上の世帯」の消費支出で、メディアでもこのデータを中心に伝えられる。
「総務省が発表した2008年4月の家計調査によると、二人以上の世帯の消費支出は1世帯当たり31万695円と、物価変動の影響を除いた実質で前年同月比-2.7%と、2カ月連続の減少となった。このうち、洋服の購入費や外食などの支出減少が目立った。勤労者の実収入は前の年に比べて1.6%の減少、これが消費を控える大きな要因となっている」といった具合だ。
 また、総務省からはこの結果を受けて、「消費の基調判断」も示される。08年4月には「減少の兆しが見られる」という基調判断を発表、前の月までの「おおむね横ばい」という基調判断を下方修正している。
 政府が国民の家計簿をのぞき見るのは、人々の消費動向が景気に大きな影響を与えるからである。
 日本経済を巨大な旅客機と考えると、高度がGDP(国内総生産)で、その増減の割合が経済成長率となる。順調に高度を上げていれば好景気、反対に高度が下がると不景気となる。GDPは、大きく(1)消費、(2)設備投資、(3)輸出入、(4)政府支出、の四つから構成されている。旅客機を飛ばす四つのエンジンというわけだが、中でも最大の出力を持つのが消費で、全体の55%を占めている。したがって、その動向が景気を大きく左右することになるのだ。このため、政府は消費動向を常にチェックし、経済政策に反映させる必要があるのである。
「家計調査」はサンプル数が十分ではないという指摘もあり、しばしば大きくぶれることもある。しかし、こうした綿密な消費動向調査は世界にも例を見ない。人々がどんなものにお金を使い、あるいは控えているかを知ることは、ビジネスの上でも役に立つ情報だ。
 人々の消費は増えているのか減っているのか。その原因は収入の減少なのか、消費意欲の落ち込みなのか…。政府公認の家計簿ののぞき見である「家計調査」を見ることで、世の中のトレンド、さらには景気の先行きを予測することも可能なのである。

著者情報

エコノミスト

玉手義朗

たまて よしろう

1958年生まれ。筑波大学卒。東京銀行、マニュファクチュラース・ハノーバー銀行などで、外国為替取引に携わる。その後、テレビ局で経済部デスクなどを経て、現在はフリー。著書に『円相場の内幕』(1995年、集英社)、『経済入門』(共著、2004年、ダイヤモンド社)がある。

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