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性知識イミダス:オトナも知ろう! 思春期男子が学ぶべき「射精道」とは

今井伸(泌尿器科医、SRHケアクリニック静岡院長)

(構成・文/加藤裕子)

 また、セックスで相手に合わせて射精するには、ある程度自分で意図して、このタイミングで出せるよう、自分で射精をコントロールできることが必要になってきます。「九、少し我慢してから発射すべし」「十三、射精を自在にコントロールできるようになることを目標とすべし」で伝えているように、目指すべきところはコントロールされた射精です。

「テクノブレイク」は存在しない

 普通、思春期の男子は言われなくてもどんどんマスターベーションをするものです。やりたくてやっているので「練習」という意識はありませんし、できてしまえば気持ちいいので、何回でも率先してやるので上達が早い、ともいえます。

 ところが、中には「マスターベーションをすることに罪悪感を感じる」「精液が気持ち悪い」という感覚をもつ子が一定の割合で存在します。なぜ罪悪感を覚えるのかということについては説明がつかないのですが、おそらく精液はネバネバしていて、あまりいい匂いもしないということで、汚いと感じるのかもしれません。といっても、大便や鼻水、あるいは女性の経血と一緒で、生理現象として自分の体から出てくるものなのだから、折り合いをつけて生きていくしかありません。「射精道」ではマスターベーションに対してプラスのイメージをもてるように、「十一、オナニーは一日に何回してもよし」「十二、気持ちのいいオナニーを追求すべし」と伝えています。

 男子たちには「射精は気持ちいい、楽しいことだ」「だから、いくらでもやっていい」と思ってほしいですね。男子生徒から必ずといっていいほど挙がる質問のひとつが「テクノブレイク(過度なマスターベーションで死に至る現象を指すネットスラング)はあるのか」ですが、マスターベーションのしすぎで死ぬことはありません。「マスターベーションをやりすぎると勉強の妨げになるのではないか」「部活の試合の前にはしない方がいいのか」なども定番の質問ですが、これもやはり一切関係ありません。

 どんなに性欲が強い男性でも、2~3回続けてマスターベーションをすれば「賢者タイム」(射精した後、急激に性欲が減少し、気だるさや虚無感が続く時間)が訪れますから、男子たちが心配するほど「やりすぎ」にはならない、ということです。彼らには、「したいのに我慢して悶々とするより、射精してすっきりしてから勉強ややるべきことに取り組んだほうがよほどいい」と話しています。

包茎の悩みは減ってきた?

 一方、なかなか皆の前では口に出しづらいのが自分の性器やからだについての悩みで、ある程度想定される疑問については、聞かれなくても話の中に入れるようにしています。たとえば、「タマ(睾丸〈こうがん〉)の位置や大きさは左右で違うのはあたりまえ」「ペニスの亀頭のへりのところや包皮に小さなツブツブがあっても正常」「ペニスの長さは5センチ以上あれば性交できる」といったことです。「(包皮が)剥けている・剥けていない」「(陰)毛が生えている・生えていない」なども、昔も今も変わらない男子の悩みといえるでしょう。

 ただ包皮が剥けていない状態=包茎については、最近の若い世代はあまり気にしていないようです。そもそも「仮性包茎」(普段は亀頭が包皮をかぶっていて、包皮を手で引っ張れば亀頭が露出する状態)には、亀頭を常に露出させる手術が必要だという意見は、1970~80年頃になって美容整形外科業界でいわれだしたことで、実際には仮性包茎でも健康や性交の面でまったく問題ありません。「仮性包茎は普通のことだ」(日本人男性の70~90パーセントが仮性包茎)という教育がだいぶ普及してきたのか、私が患者さんのペニスを診察する時も、若い人たちは剥かないまま平気でいます。むしろ、「仮性包茎はダサい」というイメージを刷り込まれた中高年の患者さんが恥ずかしがっていたりしますね。

小堀善友著『妊活カップルのためのオトコ学』(2014年、メディカルトリビューン)などの記述をもとにイミダス編集部作成

 勃起したペニスで包皮を引っ張っても亀頭が出てこない状態は「真性包茎」です。真正包茎は、亀頭とペニスの境目(冠状溝)に垢(恥垢〈ちこう〉)がたまりやすく、不潔な状態が続くことで炎症を起こしたり、陰茎がんの原因になったりするともいわれています。

 炎症を繰り返すと、亀頭包皮炎といって亀頭にかぶっている包皮の部分がカチカチに固くなって、チョロチョロと糸のような尿しか出なくなってしまう症状が起こり、高齢者の場合には腎不全の原因にもなります。亀頭包皮炎を繰り返すような人は、包皮を切除する手術(保険適用)も検討することが必要でしょう。

 ただし、真性包茎だからといって、必ずしも手術が必要ということではありません。基本的には剥き癖をつけるのが大切で、剥く練習を繰り返して最終的に剥けるようになればいいのですから、その意味では、病院に行かなくても自分で対処できるものなのです。

 剥くときは、剥いても戻るぐらいの加減で、少しずつ無理せず行います。引っ張りすぎるとちょっと裂けて血が出てしまうこともありますが、消毒などは必要ありません。また、思春期以降になると亀頭が発達して包皮が引っかかりやすくなり、剥けないものを一気に剥くと戻らなくなったりしますから、剥いたら必ず戻すようにしてください。

 大事なのは、「剥いて洗う、剥きにくかったら剥く練習をする」ということです。ペニスを清潔に保つには、ペニスを洗うときに包皮を剥いて、刺激が強くない石鹸でやさしく洗ってください。「小さい頃からおちんちんの皮を剥いてあげた方がいいのか」と心配する親御さんに対しては、「剥きたいならそうしてください」というぐらいで、無理に剥かないといけないというものでもないと考えています。ただ、小さいときはまだ亀頭が小さくて剥きやすいので、その頃からある程度スムーズに剥けるようにしておくと、思春期になったときに自分で剥いて亀頭のところを洗いやすくなるということは言えるでしょう。

「おかずローテーション」のススメ

 今の若い世代は大量のネット情報にさらされていますが、一口にネットだから悪いとはいえないと思っています。逆に、何かわからないことがあるとき、膨大な情報の中から多くの解決方法を見つけることもできるわけですから、よほど選択を間違わない限り、むしろ昔よりも正しい情報に近づく道も増えているのではないでしょうか。

 気をつけてほしいのは、ネットにあふれる刺激の強い情報です。特にバーチャルリアリティやアニメ、過激なAVのような映像ばかり見て興奮することに慣れてしまうと、現実世界の刺激では物足りなくなって、生身の人間とセックスできなくなる可能性があります。「射精道」で「十四、強い刺激のネタばかりを続けるべからず」と書いているのはそれを防ぐためで、まったく見るなとまでは言いませんが、弱い刺激でもちゃんと射精できるようにしておくことが大切です。刺激の強いものを見たら次は水着の写真や空想などの弱い刺激でマスターベーションをする、いわば「おかずローテーション法」で調整することをお勧めします。

男子が性を自然に学べない時代

「男は性のことなんて自然に学ぶものだ」と思っている人もいるようですが、射精障害などで大人になってもうまく射精できない男性が大勢いるということは、射精には正しい性教育が必要であり、男子にそのことをちゃんと教えないといけないということを意味していると思います。

 確かに一昔前であれば、銭湯に行く日常があったり、親以外の大人(近所のおじさんやお兄さん、親戚など)と接する機会が比較的多かったり、そもそもプライバシーを守るという意識が希薄だったりしたこともあり、普段の生活の中で男性のからだについて学ぶこともできたかもしれません。しかし今は男性トイレひとつとっても個室が増えているなど、男子たちの「学びの機会」が減っている状況です。また、友達同士であっても性のようなプライベートな話はしないというふうに、コミュニケーションの仕方も変わってきています。そうした時代背景を踏まえると、「性のことは誰かに聞いて自然とわかるものだ」という思い込みは禁物だと思います。

 時代ということでは、最近よく見かける、仕切りのないオープンな間取りの住宅についても懸念を抱いています。「射精道」の四に「一人になれる空間を確保すべし」と挙げていますが、いつも家族の気配が感じられるような家に思春期の男子がマスターベーションをすることができる場所はありません。これはつまり、彼らが落ち着いて射精の練習をする機会を奪ってしまうということです。特に、息子との距離が近い親子関係にある場合は、マスターベーションをしたいと思っているときに突然母親が部屋に入ってきてしまったりするので、したくてもできない、ということにもなりがちです。

 思春期になっても親からあれこれ日常生活の細かいことまで口出しされることも含め、今の時代は男子が男子としてのプライベートな時間を過ごせなくなっていると感じます。それこそ、かつては武士が14歳で元服したように、現代でもある程度の年齢になったら男子を大人扱いするということも必要なのではないでしょうか。

著者情報

泌尿器科医、SRHケアクリニック静岡院長

今井伸

いまい しん

1997年島根医科大学(現・島根大学) 卒業。島根医科大学を経て、2005年1月より聖隷浜松病院、2019年4月より聖隷浜松病院リプロダクションセンター長・総合性治療科部長。2024年10月より現職。専門領域は生殖医療(男性不妊・がん生殖)・性機能障害・男性更年期障害。日本泌尿器科学会専門医・指導医、日本性機能学会専門医・評議員、日本生殖医学会生殖医療専門医、日本泌尿器内視鏡学会泌尿器腹腔鏡技術認定医、日本性科学会幹事、同会セックスセラピスト認定医、日本思春期学会理事、島根大学医学部臨床教授。著書に『中高生からのライフ&セックス サバイバルガイド (一部執筆)』(日本評論社)、『セックスセラピー入門 (一部執筆)』(金原出版)、『中高年のための性生活の知恵(共著)』(アチーブメント出版)、『人生100年時代をなかよく生きる シニア世代の愛と性(監修)』(平原社)などがある。

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