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ヒートドーム

[heat dome]

饒村 曜(気象予報士)

 強い高気圧が同じ場所に居座ることで、暑い空気がドーム状に閉じ込められ、猛烈な暑さが長く続く大気の状態のこと。2021年のカナダやアメリカ西部、2024年のメキシコやアメリカ南部、2026年の西ヨーロッパなど、各地で40℃以上の高温が広範囲、かつ長期間にわたって観測されており、日本でも2025年と2026年には最高気温が40℃を超える日(2026年4月17日に「酷暑日」と名称決定)が連日観測された。この記録的な高温をもたらす要因としてヒートドームの存在が注目されている。

 ヒートドームは近年増加傾向にある。その背景には、地球温暖化によって地球全体が暖められていることや、海面水温の上昇などのほか、特に、赤道と北極との温度差が小さくなって上空の偏西風が弱まり、蛇行が大きくなることがある。蛇行が大きくなり長期化すると、偏西風の南側では暖気が通常の流れから切り離され、特定の場所に停滞しやすくなる。この停滞した暖気が高気圧へと発達することで、ヒートドームが発生する。

 高気圧の中心付近は下降気流であり、この下降気流によって空気が圧縮されて熱を生じ、同時に地表付近の暖かい空気が上空に逃げにくくなる。また、この場所では雲の形成が抑えられるため、日射量が増え、地表の温度がさらに上昇する。そして、圧縮された空気により、周囲からの涼しい風の流入が妨げられ、記録的な暑さが長期化、激甚化する。このため、ヒートドームが発生した場所では、連日の日中の猛暑と夜になっても気温があまり下がらないことから、熱中症リスクが急激に高まるなどの健康被害や、エアコンの使用率が上がることなどによる電力不足が生じる。また、少雨に加えて地面の水分が奪われることで干ばつや、生活用水・工業用水の不足が起こり、農業や畜産業、工業等に被害がでる。なお、アメリカなどの内陸型ヒートドームは強い乾燥を伴うが、日本のヒートドームは周囲を海で囲まれているため、湿った熱い空気がこもりやすくなる。

 2026年7月後半から東海地方や西日本ではヒートドームが形成され、長期間にわたり、猛烈な暑さとなっており、7月21日から25日までの5日連続の酷暑日、26日の39.4℃の酷暑日一歩手前の観測を挟んで27日・28日と、7月下旬だけで7日も酷暑日を観測。また8月3日までに全国延べ34の観測地点で酷暑日を観測し、2025年(延べ30地点)を上回って過去最多を記録した。

著者情報

気象予報士

饒村 曜

にょうむら よう

1951年新潟県生まれ。新潟大学理学部卒業後、気象庁に入り、予報官などを経て、1995年の阪神・淡路大震災のときは神戸海洋気象台予報課長を務める。その後、福井・和歌山・静岡地方気象台長、東京航空地方気象台長として勤務。気象庁を退任後は青山学院大学非常勤講師などを務めた。著書に『特別警報と自然災害がわかる本』(オーム社、2015年)など。

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