スーパー・エルニーニョ
饒村 曜(気象予報士)
太平洋東部赤道域の海面水温が高くなる現象をエルニーニョ現象というが、海面水温がさらに高くなる現象を、2014年頃から「スーパー・エルニーニョ」と呼ぶようになった。「ゴジラ・エルニーニョ」、「ジュラシック・エルニーニョ」などと呼ぶこともある。逆に、海面水温が低くなる現象がラニーニャ現象である。エルニーニョ現象やラニーニャ現象は、大気と海洋の相互作用から発生しており、世界で発生している異常気象の最大の原因ではないが、これらの現象に着目することで、膨大な観測と解析が必要な「世界各地で異常気象が発生しているかどうか」という判定を迅速に行うことができる。また、エルニーニョ現象やラニーニャ現象が発生すると、台風の発生数や発生海域が変わるとされている。このため、気象庁は、太平洋東部赤道域にエルニーニョ監視海域(北緯5度~南緯5度、西経90~150度)を設定し、この海域の海面水温が、平年より0.5℃以上高い状態が6カ月以上続いた場合をエルニーニョ現象、0.5℃以上低い状態が6カ月以上続いた場合をラニーニャ現象として、「エルニーニョ監視速報」などの情報を発表している。
スーパー・エルニーニョの定義ははっきり決まってはいないが、平年より3℃以上高いとすると、1951~2025年に発生した19回のエルニーニョ現象のうち、1982年春~1983年秋、1997年春~1998年夏、2014年春~2016年春の3回が該当する。地球温暖化が進むと、エルニーニョ現象が増え、その結果としてスーパー・エルニーニョも増えるとされており、そのたびに、豪雨や干ばつなどの世界的な異常気象と食料危機を引き起こしてきた。2026年春に始まったエルニーニョ現象は、同年秋ごろにはスーパー・エルニーニョの中でも最強クラスに達すると予測されており、その影響が懸念されている。
エルニーニョ現象やラニーニャ現象が発生すると、赤道域で積乱雲の発生場所が変わり、亜熱帯の高気圧に影響を及ぼす。それにより、日本などの中緯度の気象が変わるなど、地球規模での異常気象が発生する。ただ、太平洋の赤道付近では、エルニーニョ現象の影響は直接的であり、異常気象のタイプも毎回同じ傾向があるが、他の地域では影響が間接的であるため、そのときどきでさまざまな異常気象が起こる。
なお、エルニーニョ現象のときの台風は、発生海域が平年より南東側に移動し、発生数が減るとされている。しかし、日本に到達するときには、暖かい海面水温の海域を通ることで十分に発達し、しかも動きが遅い台風が多くなるとされている。スーパー・エルニーニョのときは、これらの影響がより強く表れることから、防災上の警戒が必要な台風が増えると懸念されている。