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ブランド米の誕生秘話と「お米ランキング」

美味しいお米をワインのように楽しもう!

清水宜之(米シェルジュ)

 毎年、春先に発表される「おいしいお米ランキング」。どのような方法で決まるかご存じですか? また、お米は産地や銘柄が注目されがちですが、新品種が私たちの口に入るまでに10年以上の歳月をかけて開発されていることは意外と知られていません。食味官能試験の元・専門パネラーの清水宜之さんが、主食と呼ばれながら副食である「おかず」の影に隠れがちなお米の楽しみ方を紹介します。

「お米ランキング」が決まるまで

「おいしいお米ランキング」は正式名称を「米の食味ランキング」といい、日本穀物検定協会(東京都中央区)が行う食味官能試験をもとにまとめています。食味官能試験は、各道府県などから購入した品種を試験用新米(試米)として炊き、その白飯を試食して評価する試験です。事前に試米の含有水分を確認し、炊飯は一律の加水量になるよう定められた方法で行うなど、厳密な条件下で試験します。生産者への情報提供(良食味米の開発や意識向上)や、消費者への周知を目的に1971年産米から毎年実施されています。
 実は、ここで試験されるのは、おいしい・おいしくないなどの味覚だけではなく、硬さや粘りなどの物理的評価が重視されます。というのも、お米のおいしさは、歯ごたえや舌ざわり(硬さや粘り)など物理的な感覚が7割を占めるといわれているからです。具体的には、基準となるお米を決め、その基準米と外観、香り、味、粘り、硬さなどを比較し、最終的に特A、A、A’、B、B’の5段階に分けます。基準米は複数産地のコシヒカリの中から毎年、前年の基準米と同程度の食味を持ったものを選んでいます。2016年は、15年産のお米139種を試験して、46種が特Aにランクされました。
 食味官能試験を行う人は食味評価エキスパートパネル、略してパネラーと呼ばれ、食味官能試験に先立ち、毎回、味覚試験と臭覚試験に合格しなければなりません。甘みや苦みなどの成分をなめたり、香り成分を嗅いだりして各成分を特定、全問正解が合格の条件です。北海道、関東、名古屋、神戸、九州の各地域で選出され、1回の試験は累計100人前後で行われます。ここで得られた結果を分析・分類したものが「米の食味ランキング」として発表されるのです。毎年11月から翌年2月くらいまでが試験期間なのですが、パネラーによっては一人で複数の産地品種を反復試験含めて100回くらい試食するのでわりと大変です。

お米を競馬やワインのように楽しんでみよう

 米の食味ランキングで特Aにランクインしたお米は、無条件においしいです。とはいえ、ワインと同じで、同じ産地の同じ品種でも田の場所が異なれば味が違うことがあります。収穫した年によっても違いは出るでしょう。炊き方や炊く道具によっても異なります。ランキングは一つの指標としては重要ですが、特Aというランクにとらわれ過ぎないようにしたいものです。おいしい・おいしくないの二択ではなく、食べ方を少し工夫することで、お米を主役にすることができます。食味官能試験のように食べ比べは無理だとしても、日によってお米を変えたり、メニューによって変えたりするのも楽しい食べ方です。また、お米にまつわる物語を知ることでも興味は広がるでしょう。
 たとえば、世界中のサラブレッドはすべて3頭の馬にさかのぼれるといいますが、お米もさかのぼると「愛国」や「亀の尾」などいくつかの品種に行きつきます。「愛国」は明治20年代に宮城県で、「亀の尾」は明治30年に山形県で誕生した品種です。これに明治10年ごろに兵庫県で生まれた「神力」を加えて、大正から昭和にかけて三大品種と呼ばれました。ここから品種改良が繰り返され、1956年にコシヒカリが生まれました。そして現在、市場に出ているお米の約7割はコシヒカリの孫やひ孫になります。日本人はコシヒカリの食味が好みなのですね。
 また、食味官能試験では毎年、累計140前後の産地品種を試験していますが、日本ではこれまで700品種が開発され、飼料米を入れて約300品種が流通しています。お米の品種改良は育種と呼ばれ、病害虫対策や気候条件への対応、良食味の追求などを目的に国の農業試験場(13カ所)と都道府県の試験研究機関(47カ所)で行われます。年間、各機関で100~200くらいの組み合わせをつくり、多いときは全国で5000くらい交配した品種を1年間育てて選別します。これを毎年7年間くらい繰り返し、期待する特徴が安定していることが確認できたら、農家に依頼して実証実験を実施。これらをクリアしてようやく品種登録が可能になるのです。まるで、サラブレッドのようですね。最初の交配から世に出るまで約10年。どうでしょう、少し愛着が出てきましたか?
 日本穀物検定協会のWebサイトには、89年から現在までの特Aランク一覧が用意されています(http://www.kokken.or.jp/index.html)。これをみると、魚沼産コシヒカリは27年間途切れることなく特Aを守っており、ブランド米のトップを走っていることがわかります。また、これまで北海道や青森など寒い地域ではおいしいお米はできないといわれてきましたが、近年、北海道の「ななつぼし」や「ゆめぴりか」は特Aの常連に、同じく北海道の「ふっくりんこ」と青森の「青天の霹靂」は新人にて特Aにランクインしています。温暖化が理由とも言われていますが、なにより気温が低い地域でもおいしく育つ品種の開発に尽力されてきた人たちのおかげであることは言うまでもありません。また、平均気温が1度上がると育たない品種もあります。もしかしたら10年後、いま食べている品種のどれかは消えているかもしれませんね。
 各地域の米の品種を紹介するWebサイトでは、かけ合わせた品種の種類や開発物語などが紹介されています。お米の背景を追いかけていくと、競馬やワインのような楽しみ方が発見できるかもしれませんね。

お米のおいしい炊き方

 最後に、おいしいお米の炊き方を紹介します。

1.お米は「生鮮食品」として扱おう
 まず重要なのは、保存です。家庭では米びつに精米したお米を入れて保存しておくのが一般的ですが、精米したお米は身ぐるみ剥がされた裸も同然、時間がたつと酸化したり、まわりのにおいを吸収してしまいます。酸化するとカルボニル酸が古米臭を発生させ、脂肪酸度が高くなると黄色く変色してしまいます。常温のほうが酸化が進みやすいので、お米は「生鮮食品」であることを理解し、可能であれば冷蔵庫に保管しましょう。また、冷蔵保存でも酸化しないわけではないので、2週間くらいで食べきるようにしたいものです。

2.お米は同じルールで量る
 お米を計量カップで量るとき、いつも同じルールで行います。たとえば、トントンとカップをテーブルで叩くとカップに入る分量が微妙に変わります。分量が違えば、炊き上がりが変わります。一定したおいしさでお米を食べたい場合は、お米の計量に注意しましょう。

3.お米は洗いすぎない
 「お米を研ぐ」といいますが、かつてはお米に残った糠やごみを取り除くため、押し付けるようにお米を洗う必要がありました。現在では精米技術の精度が上がっており、研ぐというイメージではありません。1回目は水流を作るように軽く2~3回かき混ぜて水を捨てます。2~3回目はお米に触れず、10回くらい水を回して水流を作るくらいでかまいません。もしくは、ソフトボールを握る感じで指を広げ、円をかくようにお米をかきまぜます。
 このとき、1回目で使う水だけは、軟水のミネラルウォーターまたはカルキを抜いた水を使いましょう。お米は一番最初の水を一番多く吸うからです。炊くときに入れる水もミネラルウォーター(軟水)を使うのがベストです。

4.水の量は正確に
 お米の分量と同様、炊くときの水の量も注意したいものです。お米の吸水量は決まっているので、余分な水は炊き上がりも水っぽくなってしまいます。

5.炊き上がったら天地返しで水分を飛ばす
 炊き上がったら、白飯を十字に切って天地をひっくり返します。釜の底に残っている水分や熱気を逃がしてあげましょう。また、内釜の蓋に付いた水分も拭いておきます。そのまま蓋を閉めると、水滴が落ちてその部分が水っぽくなってしまいます。

 細かく書きましたが、要は自分で一定のルールを作り、同じ方法で炊くようにすればいいのです。毎回、同じルールでお米を炊いていると、味のブレが少なくなります。せっかくのおいしいお米です。少しだけ気にかけて、さらにおいしく食べてください。

著者情報

米シェルジュ

清水宜之

しみず のりゆき

1972年北海道札幌市生まれ。北海道立白石高等学校普通科卒業。1991年に一般財団法人日本穀物検定協会に入会。北海道内(札幌、苫小牧、函館など)にて外国産農産物の検査、検定業務に従事。その後、宮城県仙台市では、東北全域の飼料証明、米麦用包装容器検査の業務統括を担当、東京本部では、JAS認定業務や新規事業の企画立案、推進、販促の全国統括を担当した。2016年7月、株式会社むらせ(http://www.murase-group.co.jp/)に転職。担当業務は、新商品「ライスグラノーラ」を中心に各種商品の販促や広報・営業など。全国の各種イベントでのワークショップや講演なども精力的に行っている。
(2016.11)

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