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一語千金

ジャンクボンド(ジャンク債)

[junk bond]
食べ過ぎにご用心

玉手義朗(エコノミスト)

 ポテトチップスやポップコーンなどのスナック菓子、ハンバーガーにドーナツ……。これらの食べ物は高カロリーで塩分や糖分なども多い一方、ビタミンやミネラルなどが少なく、食べ過ぎると肥満や糖尿病を引き起こす恐れが高いことから、「ジャンク(がらくた)フード」と呼ばれている。したがって、食べ過ぎは禁物なのだが、食べ始めると止まらなくなる独特の味を持っているのも事実だろう。
「ジャンクボンド(ジャンク債)」も、なかなかやめられない「おいしさ」を持っている。ジャンクボンドとは、利息は高いが、紙くずになる恐れも高いハイリスク・ハイリターン債券(ボンド)の総称だ。
 債券は政府や企業などが発行する借用証書で、投資家に販売して資金を調達する一方で、定期的に利息を支払い、償還日(満期日)には元金を返済する。
 利息の水準は、発行者の信用力によって決まる。発行者の信用力が低く、元金の返済が受けられない危険性(デフォルトリスク)が高い場合、それに見合った高い利息を支払わなければ、投資家は購入してくれない。このため、経営状態が悪い企業や創業間もない新興企業などの信用力が低い企業は、より高い利息を付けた債券を発行せざるを得なくなる。これが「ハイイールドボンド高利回りボンド)」と呼ばれることもあるジャンクボンドだ。
 ジャンクボンドの厳密な定義はないが、基準の一つとなっているのが、ムーディーズやスタンダード・アンド・プアーズ(S&P)などの格付け会社が発表する「信用格付け」だ。格付け会社は発行者の信用力を調査して、「Aaa」(トリプルA)などとランクを付けている。一般的には、ムーディーズで全21段階中上から10番目の「Baa3」 、S&Pでは全22段階中上から10番目の「BBB-(マイナス)」より下に格付けされている債券が、ジャンクボンドと呼ばれている。
 高い利息が得られるジャンクボンドは、投資家の選択肢を広げる役割を果たしている。安全だが利益も小さい投資ばかりでは、思うような収益が上がらないことから、高利回りのジャンクボンドが魅力的な投資対象となるのである。おいしさは保証つきだが量の少ない「懐石料理」だけではお腹がいっぱいにならないので、高カロリーのジャンクフードが食べたくなるというわけなのだ。
 ジャンクボンドは、債券を発行する側にとっても、大きなメリットがある。経営が悪化している企業の場合、再建のための資金を調達するのは容易ではない。こうした企業にとって、支払う利息が高くなるとはいえ、ジャンクボンドを利用して資金調達ができれば、経営再建の足がかりを得ることができる。信用力が低い新興企業も同様であり、ジャンクボンドの存在が、企業経営、さらには経済全体を活性化させる役割を果たしているのである。
 ジャンクボンドと聞いただけで「買ってはいけない!」と決め付ける投資家もいるが、それはより大きな利益を得るチャンスを逃していることに他ならない。時折食べるジャンクフードがとてもおいしく感じられるように、節度を持って投資すれば、「おいしい思い」をすることができるのがジャンクボンドなのである。

著者情報

エコノミスト

玉手義朗

たまて よしろう

1958年生まれ。筑波大学卒。東京銀行、マニュファクチュラース・ハノーバー銀行などで、外国為替取引に携わる。その後、テレビ局で経済部デスクなどを経て、現在はフリー。著書に『円相場の内幕』(1995年、集英社)、『経済入門』(共著、2004年、ダイヤモンド社)がある。

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