カジノが日本を食いつぶす!(前編)~誘致合戦に横浜が参戦、IRは本当に「地域経済に資する」のか
鳥畑与一(静岡大学人文社会科学部経済学科教授)
(構成・文/川喜田研)
このコンプ・サービスの存在を地元経済への影響という観点から考えると、IRの新たな問題点が浮かび上がってくる。それは、コンプ・サービスがIR内に入る様々な商業施設にとって、カジノの収益の一部を使った「利益補填」として機能しているという点である。客がポイントを使って宿泊、飲食、買い物などをした場合には、同等の額がカジノから店側に支払われることになっているのだ。そのため「IR施設内」のホテル、レストラン、娯楽・商業施設などは、「IR施設外」のライバルに比べて有利な条件で、より競争力の高い、安価なサービスを提供することが可能になる。
その結果、何が起こるのか。IR内であれば宿泊も食事も割安になる客が、わざわざIRの外に出ていこうとするだろうか。IRによって喚起された消費需要は、コンプ制度の受益者であるIR施設内の事業者によって囲い込まれ、一方、IR周辺にもとからあったお店などは、不利な条件での競争を強いられることになる。巨大なショッピングモールの進出が既存の地方商圏を破壊し、その利益が地元経済ではなく、一部の大企業に集約される構造と同様で、IRの誘致が本当の意味での「地域経済の活性化」を実現できるかといえば、甚だあやしい。
著者情報
静岡大学人文社会科学部経済学科教授
鳥畑与一
とりはた よいち
1958年、石川県生まれ。大阪市立大学大学院経営学研究科後期博士課程修了。専門は国際金融論。著書に『略奪的金融の暴走』(2009年、学習の友社)、『カジノ幻想』(15年、ベスト新書)などがある。