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社会問題

年金改革法で生活不安は解消されるのか

新ルールで生活困窮者を増やさないために

藤田孝典(NPO法人ほっとプラス代表理事)

(構成・文/中澤まゆみ)

中澤 納めたくない理由には、国に対する不信感があると思うんです。
藤田 あります、あります。政治家に対しても行政に対してもすごく強いです。でも、どこかで、この負のスパイラルを絶たないといけない。それには、まず、ちゃんと税金を払わないといけないと思うんですね。どう考えても、2015年時点(2015年10月1日現在)で高齢化率(総人口に占める65歳以上人口の割合)が26.7%という中で、よく維持しているというくらい、国民負担率は低いです。だから税金は、北欧並みとは言わないけれど、ヨーロッパ並みに段階的に引き上げ、それを確実に社会保障に回していく。そして、「税金をこれだけ払っても生活は楽になったよね」という感覚を取り戻したいんですよね
中澤 現在の年金制度も、経済成長という前提があって成り立っていた。しかし、そういう時代ではなくなったということに、気がつかないといけないですね。
藤田 そうです。本当はちょっと苦しいけれど、税金を少し上げないと……。
中澤 ただ、政治家は言い出せません。
藤田 そうなんです。これまで消費税を上げることで、政権を失うことも起きていますから。税金を上げると票を失うのでは、誰も怖くて議論できないですよ。
中澤 あと安倍さんを含め、政治家には明るい未来だけを語るという、悪い癖がある(笑)。
藤田 そうそう、何よりも嘘言っちゃ、ダメだと思うんです。正直に民主的に議論ができるように国民を信頼して情報を出してほしいと思います。政治家と国民の相互不信感は根強いのでしょうね。
中澤 そういう意味で、社会保障に関する、国民的な議論が必要だということは、実はあちこちで言われているんだけど、まだ始まっていません。藤田さん、始めてください。
藤田 始めようと思って、いろいろ議論を仕掛けているんですけど……。税金の議論になると、もう、右から左まで、ぐちゃぐちゃになって、まとまらないんですよ。
 だから僕はこんなふうにまとめたいんです。税金というのは、社会のために使われています。社会保障費が必要だというのは、合意できますよね。だったら、税金っていうのは必要ですよね。じゃあ、全体的に少しずつ引き上げ、社会保障費に回しましょう……と。このくらいまでは、合意できると思うんですよ。誰がどんなふうに負担をするのか、という各論の議論は脇に置いて、その手前の総論の話です。まずは税金の意味や増税による社会保障予算の確保くらいは国民的に合意したいのです。急がずに総論からの合意でいいのです。これすら貧乏な人からお金持ちまで、みんな「税金反対」「税は1円でも安く」ですから話にならないと思います。
 僕らは、そろそろ覚悟を決めないといけないんです。税金を上げて社会保障に回し、生活インフラをちゃんと整備していけば、低成長の時代でも年金を含めて社会保障を維持できる。安倍さんの言うパラダイムシフトではないパラダイムシフトを本気でやらないといけない時期に来たんです。パラダイムシフトって、ずっと言われているんですけど、初めてじゃないですか、本格的に福祉社会への転換をやらないといけない時期になったのは。
中澤 消費税に関しては、上げてもいいという高齢者は結構いるんです。もしも社会保障費に回してくれるんだったらって。
 年金だけではなく、医療保険、介護保険制度を含めた社会保障を、どう若い世代に残していくか、というのは大きな問題です。そういう意味では、世代を超えた社会保障に関する議論が必要です。藤田さんには推進役になってほしいと思います。
 今日はありがとうございました。

著者情報

NPO法人ほっとプラス代表理事

藤田孝典

ふじた たかのり

1982年茨城県生まれ。ルーテル学院大学大学院総合人間学研究科社会福祉学専攻博士前期課程修了(社会福祉政策)。聖学院大学客員准教授。反貧困ネットワーク埼玉代表。ブラック企業対策プロジェクト共同代表。厚生労働省社会保障審議会特別部会委員。首都圏で生活困窮者支援を行うソーシャルワーカー(社会福祉士)。著書に『下流老人 一億総老後崩壊社会』(2015年、朝日新聞出版)、『ひとりも殺させない』(2013年、堀之内出版)、共著に『知りたい!ソーシャルワーカーの仕事』(2015年、岩波書店)など。
(2016.1)

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