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連載

連載書籍化スペシャル 第2弾  俺たちは純文学に酔っている(ゲスト/古川真人)

鴻池留衣(小説家)

古川真人(小説家)

本サイトで連載された「純文学のナゾを解け」が、『純文学って何だよ』として刊行された。
それを記念して鴻池さんと同じく2016年に新潮新人賞を受賞しデビューした古川真人さんをゲストに迎える。
芥川賞、川端賞を受賞している古川さんの定義する純文学とは? そして『純文学って何だよ』を読んで感じたこととは?   さらに、鴻池さんに物申したいこととは……。
デビュー10年来の親友でもある2人の炎上覚悟の泥酔酒場対談!

古川真人さん(左)、鴻池留衣さん(右)

忘れられない10年前の夜

鴻池 今日は古川くんにいろんな話をしてもらいたい。聞きたいこともたくさんある。まぁ、飲みながら適当にやろう。

古川 俺に質問なんかないでしょう。

鴻池 あるよ! あるんだけど使えない話が多いんだよな(笑)。

古川 一応、読者のみなさんのために我々の出会いの話をしておきましょうか。

鴻池 そうだね。我々は2016年に新潮新人賞でデビューしたんですよね。それで、選考会の日、「受賞しました」と新潮編集部から電話が来て、これは珍しいのかもしれないけど、選考委員が選考を終えて食事している場所に呼ばれたんだよね。

古川 そうそう。そこに当時、選考委員だった川上未映子さん、桐野夏生さん、中村文則さん、福田和也さん、星野智幸さんがいらっしゃった。俺は鴻池さんより遅れて行ったんだけど、鴻池さん腹据わってんなーって思った。

鴻池 なんかしたっけ?

古川 だって、あんた、川上さんと中村さんに挟まれながら、美味しそうに肉食ってたよ。

鴻池 そうそう、ステーキ食ってた。いや、でも食事なんか喉を通らないぐらい緊張してたよ。

古川 ウソだ、バクバク肉食ってたよ。俺はもう落ちたと思って家でワイン飲んでた。

鴻池 来る前からすでに飲んでたのね。俺は、自分が絶対受賞すると思ってたけどな。

古川 俺、あのとき緊張でガチガチで、隣にいた桐野夏生なつおさんに「桐野なつきさんは」って話しかけちゃって……。岡本夏生と混同しちゃった。当時の編集長に0.5秒ぐらいで「あっ、古川さん受賞作は、何枚ぐらいでしたっけ?」てすぐに話変えられた(笑)。

鴻池 ははは(笑)。

古川 あれはヤバかったね。川上さんが会場に到着したところで、「おめでとう!」と言って握手してくれたの覚えてる?

鴻池 あーそうだっけ、もはや川上さんと握手したのかどうか……。

古川 福田和也さんとハグしたかもしれない?

鴻池 うん、福田さんとハグ……。なんかもうあの日のことは忘れられないけど、記憶が曖昧だわ。もう、10年経ったんだもんね。古川くんとは、そのとき、小説家になった日からの知り合いですよ。

古川 そうね。あの日、その会が終わって、編集者はみんな会社に戻ると。俺ら取り残されたよね。

鴻池 そうそう、編集者がタクシーに乗り込む選考委員を見送ったら、「じゃあ、また、我々は仕事があるんで」みたいな感じで解散になって、俺らは駅まで2人で歩きながら「受賞したね」とかって話してね。それで、古川くんが、「もう一杯行きませんか?」って誘ってくれたんだけど、俺、次の日バイトだから断った。というか、その時点ではお互いの作品読めてないからね。

古川 そのとき、電話番号交換して受賞作が「新潮」に載ってから飲んだ。

鴻池 渋谷の不味いモツ焼き屋でね。

古川 そこで、鴻池さんから、石原慎太郎やジャン・ジュネの小説が好きだとか色々、聞いた。

鴻池 ごめんね、浅い文学遍歴しかなくてさ。

古川 そんなことないよ。そのあとも、よく電話で話したよね。

鴻池 俺ら以降の新潮新人賞の受賞者を囲む会に2人呼んでもらったこともあった。

古川 中西智佐乃さんが受賞した会で互いにへべれけになって、翌年以降、呼ばれなくなると。

鴻池 あーひどかったね。古川くんのほうがヤバかったけどね。

古川 ちょっと真面目な話するとさ、よく10年間、我々この世界にへばりついてこれたと思うよ。だって、全員が全員デビューして書き続けられるわけじゃないよね。新人賞とったことで、燃え尽きてしまう。または、家庭の事情や健康の問題、編集者さんとの相性、書き続けられないことも色々あるわけだ。その中で、今回『純文学って何だよ』に出てくる、町屋(良平)さん、砂川(文次)さんらも同じ年のデビューでいまも書き続けている。

鴻池 10年書き続けている。

古川 高山羽根子さんも、純文学の作品を発表したのは、2016年なんだってね。

鴻池 そうね。高山さんも同期だ。

古川 だから、俺の中では、この対談本に出てくる人たちは、みんな戦友のような気持ちもあるね。

鴻池 うん、わかる。ライバルで蹴落とすとかそういう感じではないよね。

著者情報

小説家

鴻池留衣

こうのいけるい

1987年埼玉県川口市生まれ。慶應義塾大学文学部仏文科中退。2016年「二人組み」で新潮新人賞を受賞してデビュー。著作に『ナイス☆エイジ』(新潮社 2018年)、『ジャップ・ン・ロール・ヒーロー』(新潮社 2019年)がある。

小説家

古川真人

ふるかわまこと

 1988年7月福岡県福岡市生まれ。國學院大学文学部中退。2016年「縫わんばならん」で新潮新人賞を受賞してデビュー。2020年「背高泡立草」で第162回芥川賞、2026年「近づくと遠ざかる船」で第50回川端賞を受賞。著作に『縫わんばならん』、『四時過ぎの船』、『ラッコの家』、『背高泡立草』、『ギフトライフ』、『港たち』がある。

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